夜 ページ29
真夜中。
あの後行動組にアンプルが足りたかどうかの確認が行われ、その後翌日まで待つという事になって皆眠りについた。
……私を除いて。
どうしても、気になる。
昨日ちらりと見えた人影、あれは兄なのだろうか。兄だとしたら、どうして13番街に？
島の中には居るかもしれないなんて勘で思っていたが……実況メンバーではないのに本物の兄がここに居るのだとすれば兄がパカさん側の人間だという可能性が高くなる。ミミクリーなのだとしたら、今まで過去少なくとも12回は行われてきた筈のリアル実況、そのどれかに兄が参加していて───ミミクリーに出会った事になる。
………確かめなきゃ。
足音を立てないように動き、最大限物音を立てずに廊下に出た。
月明かりを頼りに、探索を開始する。入出さん経行動組が大体殲滅してしまったミミクリーの残骸を見ながら歩き、どれくらい経っただろうか。
不意に目の前に、その人が現れた。
私より幾分か高くなった背丈、顔つきも大人びた気がする。でも、さらさらした白銀の髪と深い青色の瞳は幼い頃と変わらない。
───完全に、私の双子の兄、ユキヒナの成長した姿がそこにあった。
「………こんばんは、ユキヒナ。」
「Aもこんばんは。」
返答は出来まいと声をかけたら、驚いた事に返答があった。人好きのする笑みも穏やかな口調も兄のものと同じ、でも油断は出来ない。
「……ずっと逢いたかったんですよ？」
「ごめんね。父さんと母さんも心配してるよね。」
「………。そう、ですね。」
………やはり、ミミクリーだったか。
こんなにあっさりボロを出してくれるとは思っていなかった。私達双子に両親はいない。居るのは伯父のみだ。
ポケットに手を突っ込み、簪を握る。
「……ハグしてもいいですか。兄さん。」
「良いよ。おいで。」
疑うこともなく両腕を広げた兄……ミミクリーに向かって、簪を振りかぶった。
「！？」
咄嗟にミミクリーは身を庇い、尻餅を付く。
「A？何を……！？」
月明かりに反射する透明な宝石。
伯父がくれた5本の簪の中に1つだけ、兄が色を選んだ物がある。それがこの透明なイミテーションの付いた簪だ。
「そんな物騒なもの、どうして……。」
「ねぇ。」
この兄の姿をした人物が本物であったなら、どれほど嬉しかったか。偽物でもそれはそれで構わないが、騙すのならもっとしっかり騙してよ。淡い期待を抱いた自分に心底嫌悪感を感じると同時に
………無性に、腹が立った。
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ユキヨル(プロフ) - 新埜さん» ご指摘ありがとうございます！！非公開になってるのに気がつきませんでした……公開にしておきます！！ (2019年8月26日 18時) (
レス) id: b49c625d58 (このIDを非表示/違反報告)
新埜(プロフ) - ユキヨルさんのお話、文才が凄くて面白いです！！あとすいません、おそらくですが、鮮血湯煙事件のとこ、1話目が非公開になっていると思いますよ!! (2019年8月26日 17時) (レス) id: a85fd0d46b (このIDを非表示/違反報告)
ユキヨル(プロフ) - 林檎さん» ありがとうございます(*´ω｀*)体調気を付けますね！ (2019年8月24日 18時) (レス) id: b49c625d58 (このIDを非表示/違反報告)
林檎(プロフ) - 更新頑張りながら体調にも気をつけてきださいね！ (2019年8月20日 10時) (レス) id: eadb533606 (このIDを非表示/違反報告)
ユキヨル(プロフ) - Sayakaさん» なるべく毎日更新出切るように頑張りますo(･ω･o) (2019年8月20日 10時) (レス) id: b49c625d58 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ユキヨル | 作成日時：2019年8月19日 14時
