藍よりも深く【夕闇に誘いし漆黒の天使達】

煙。5 ページ36

.
.
.

目的地の私たちの元バイト先のアパレルショップまでは1時間くらいかかる。

どうしよう。どうしよう。

急かされるがまま、ともやの車に乗ったけど、


ともや「なん？お前緊張してんの？」

『いや緊張してないほうがおかしいでしょ…』

そういうと、はは、と乾いた笑いをひとつして、アイコスを吸い出す。

はぁーとはかれたその煙はモヤモヤと車内に充満して、
ちらっと私を見て、ともやは薄く窓を開けた。


『いいよ、別に、煙慣れてる』

冷房つけてるのに窓開けなくても

ともや「お前タバコの煙嫌いじゃん」

『…もう慣れたよ』


ライブハウスで働いていると、大体のバンドマンがタバコを吸うから、ずっと嫌だったタバコの煙にも慣れてしまった。

ともや「そ、」


ともやは付き合ってる時からタバコを吸ってて
その頃はラッキーストライクで
タバコの匂いが嫌だから、車の窓を開けてと騒ぐ私を笑いながら窓開けたり閉めたりしていた。
毎回そうだった。いじめだよ。あんなの。


なのに今、

薄く開けられた窓はそのままで。


閉めるノリやらないのか、なんて一瞬でも思った私の思考を頭を振ってかき消した。


そんなことをするような仲じゃないんだ、もう。


いじめだよ、なんて怒っていたけど、あのやりとりが好きだったんだと、今更気付く。



ともや「もうすぐつくよ」

『うん、』




.
.
.

煙。6→←煙。4

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す