大空562 ページ22
Noside
一方、汚物の如く流されたカエデたちは、激流で満たされた地下トンネルのような場所を猛スピードで流されていた。
その時、カエデたちの視界が自分たちを追い越していく魚の影を捉えた。
それは魚だった。
どうやら流された場所は、他の川や湖とも繋がっている地下水脈らしい。
その内の1匹が、いつの間にか必死に息を止めているシアの顔のすぐ横を並走ならぬ並泳していた。
何となしその魚に視線を向けるシア。
目があった。
魚ではあるが人間の顔
それもおっさん顔の目
つまり、シアと目があった魚は人面魚だったのだ。
どこかふてぶてしさと無気力さを感じさせるそのおっさん顔の人面魚は、あの懐かしきシーマ○を彷彿とさせた。
驚愕に大きく目を見開くシア。
思わず息を吐きそうになって慌てて両手で口元を抑えた。
しかし、驚愕のあまり視線を逸らすことができない。シアとおっさん(魚)は見つめ合ったまま激流の中を進む。
永遠に続くかと思われたシアとおっさん(魚)の時間は、唐突に終わりを迎えた。
シアの頭に声が響いたからだ。
「(ちっ、何見てんだよ)」
舌打ち付きだった。
今度こそシアには耐えられなかった。
水中でブフォア！と盛大に息を吐き出してしまった。
しかし、そんなシアに目もくれず、おっさん(魚)はスイスイと激流の中を泳ぎあっという間に先へ行ってしまった。
後に残されたのは、白目を向いて力なく流されるウサミミ少女だけだった。
それに気づいていないカエデたちはそのまま流されていった。
すると、目の前がだんだん明るくなっていた。
そう思った途端……
「どぅわぁあああーー！！」
「きゃぁあああーー！！」
「んっーーーー！！」
「ッ！！」
「…………」
噴き上がる水の勢いそのままに、6人……5人が悲鳴を上げながら飛び出してきた。
悲鳴を上げながら10メートル近くまで吹き飛ばされると、そのまま、ドボンッ！と音を立てながら落下した。
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