虹空041 ページ4
[Noside]
スクアーロの怒りに気付かないベルニーニ社長はカエデの話も聞かずに
お構い無しに娘自慢を始める。
「ソフィアはピアノを弾いているのですが、才能があるらしく。ピアノの先生から『上達する速さが他の生徒と比べ物にならない』と褒めの言葉を頂いたのです」
まるで自分のことの様に自慢するベルニーニ社長に対し、ピアノの話になったとたんソフィアの顔から笑顔が消えた。
そんなソフィアの様子に気付かないベルニーニ社長は、チラリと会場にある舞台の方へ視線を向ける。
視線の先には昨日まで無かったグランドピアノが設置されていた。
ピアノがある事を確認したベルニーニ社長はニヤリと笑みを溢す。
「丁度舞台にはピアノがありますし、娘の演奏を聴いていただけませんか?」
偶然ではなくアンタがピアノを設置したんだろうなと、皆が思ったが、誰も口では言わなかった。
「さぁ、ソフィア。行きなさい」
「ですが、お父様…」
「何をしている、早く行きなさい」
「はい…」
父であるベルニーニ社長に言われ、何かを言いたそうなソフィアは渋々、舞台にあるピアノへと足を進めた。
「(あれ? ソフィアさん、どうしたんだろう?)」
表情を曇らせ重い足取りで向かう様子に気が付いたコナンはどうしたのだろうかと疑問を持つが、それは直ぐに分かった。
ソフィアは顔に影を落としながら演奏を始めた。
曲は大抵の人が1度は聞いたことのある、モーツァルトの曲、ピアノソナタ 第15番 八長調を弾いているのだが…。
ハキッリ言って、とても聞くに堪えない下手すぎる演奏だった。
何回も音程を外し、間違えて別の鍵盤を叩いたりして、もはや聞くに堪えない曲だった。
「あの姉ちゃん、何の曲を弾いてんだ?」
「多分、モーツァルトの曲を弾いているんだと思うのですが・・・」
「歩美、なんだかモヤモヤする」
と、子供達もソフィアの演奏にしかめた顔を見せるほど、不評であった。
ソフィアにピアノを教えている先生が言っていた『上達する速さが他の生徒と比べ物にならない』とは、他の生徒より下手すぎて中々上達しない意味で言っていたのではないのだろうか?
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