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時計の短針が1時を指す。とうの昔に空は黒く染められて、東京の明度を低く下げていた。その代わりに都心部では、電光の灯りがつき宝石を散りばめたかのような光を放っている。
……が、生憎私がいるところはそんな都心から離れた山奥だった。鬱蒼と茂る木々の中にある整備された石段を登っていくと、寺社仏閣のような建物がいくつも見えてくる。
ここは東京都立呪術高等専門学校。若き少年少女が呪術という力の使い方を学ぶ場所であり、それと同時に東日本に存在する呪術師の拠点でもある。
この高専に存在する学生は10にも満たない。呪術師界の人員不足はここにも顕著に現れており、今私が在学する第1学年だけでも僅か4名である。
今年の四月。卒業した兄と入れ替わるようにして高専に入学した私は、同学年の生徒たちと初めて会った時思わず天を仰がざるをえなかった。
御三家である禪院家の禪院真希、呪言師界のトップに君臨する狗巻家の一人息子の狗巻棘、そして特別変異呪骸のパンダ。正直なところパンダはよく分からないが、狗巻棘と禪院真希はどちらも名家の生まれである。私はどこにでもいる呪術師家系に生まれた一人で、彼らのように何か特異な術式もないので正直尻込みしてしまっていた。
が、普通に話していくと彼らにも術式などで色々あるらしく割と普通に打ち解けることが出来た。特に、同性である真希とはまあ信頼し合える関係だと自負している。……あくまで私が思っているだけで、真希からどう見られてるかは知らないが。
かくいう私も術式に関しては何かと苦労してはいる。私が持っている術式『双眸無限』は術式を刻んだ布を着用したり目を閉じていないと呪力が徐々に消費されていくのだ。
もちろん呪力が消費されていくと、それに伴って疲労が来るのでそれを防ぐために着用しているのだが……正直、運が悪かったとしか言いようがない事件が起こった。
入学時、担任が紹介された時に思考を放棄したくなるようなことが起こったのだ。
「おっはよー新入生!初めまして、僕の名前は五条悟。宜しくね!」
満面の笑顔でそう言った担任──五条悟は間違いもなく本物だった。御三家の五条家現当主であり、呪術界最強と言われている人が何故高専の教師を……と疑問は多々あったがそれはもう考えても仕方がないから置いておこう。
「あ、君がAAだよね?目隠し、僕とお揃いだね!」
そう言われた時心の奥底から思った。勘弁してくれと。
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作者名:Y.N | 作成日時:2022年12月2日 15時