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『黒田先生、お久しぶりです!』
黒「Aちゃん!!久しぶりやね〜!まあた綺麗になって!すっかりお姉さんやない!」
先生に両手でほっぺたを挟まれていると
「Aちゃん!久しぶりやん!」
「会いたかったでー!」
「皆ー!うちらの可愛い妹が来たで!!」
「てか先生!そろそろ離したってください!」
笑いながらほっぺたを解放してくれた先生。
そしてわらわらと先輩達が集まってきてくれた。
黒「Aちゃんとは会ったことない子もおるよな。連休入る前に話した東京の高校生や。今日から見学とピアノのアシスタント的な事してもらうからよろしくしたってな」
『三好Aです!今日から3日間よろしくお願いします!』
「よろしくな!」
「先生が推してる子やんな?むっちゃピアノ上手いて」
「せや。やけど名前聞いたことないよな」
「コンクールとかには出てへんらしいで」
「へえ〜、先生が言うくらいやから相当上手やろ、なんやもったいないんちゃう?」
その時、パチン!と手を叩く黒田先生。
黒『はい!色々聞きたいことあるかもしれんけど、それは後でな!さ、準備するで!』
「「「はい!」」」
先輩に指示され椅子を運び、並べる。
先程まで体育館の隅ではバレー部がちらほら残っていてストレッチをしていたが、今はギャラリーに登っており、その中には大人気のアツム君もいた。
隣にいる銀髪の人とは顔が良く似ていた。
双子なのかな、凄い似てる。
一緒にバレーやってるんだ、仲いいんだな。
そんなことを考えていたら準備が終わり早々に練習が始まる。
黒「まずは!皆Aちゃんのピアノ聞いてみたいやろ?」
「聞きたい!」
「お手並み拝見やな!」
黒「弾いてもろてもええ?」
『もちろんです!何でもいいですか?』
黒「ええで」
『わかりました。それじゃあ…』
ふぅ、と息を吐くと訪れる静寂。
広い体育館には似合わない。
誰かがゴクリと喉をならす。
向けられている期待と少しの緊張と興奮がジワジワと全身に伝わる。
この感覚だ。
私が1番を嫌って、手放した感覚。
私が今日ここに来た意味。
電話をもらった時からわかっていた、ここで弾いたらまた人前で弾きたくなると。
でも、だからこそ今日ここに来てピアノを弾く。
私のピアノは花、佐久早君や古森君、友達の前で弾き楽しいね、と笑う物でいい。
この感覚にもう一度蓋をするため、私は今大好きなピアノの前に座っていた。
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作者名:にきい | 作成日時:2020年5月25日 23時