忘れた記憶【青】 (ページ5)

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…

安「ここが僕の家」

『お邪魔します』

安「……Aの家もう解約してあったから荷物もないし、
今度役所行って色々手続きせなあかんよね」

ブツブツ呟いている安田さん。

安田さんの家は、生活感があって、少し懐かしい感じ。

『…？』

仕事の資料なのか、リビングの机の上には大量の書類が束になっておいてあった。

安「あ、ごめん。散らかしたまんまや」

パタパタとスリッパを鳴らしながらあちこち片付け始める安田さん。

ソファーに脱ぎっぱなしになっていた服や下着を洗濯機やカゴに入れたり、

薄く埃の被った書類を部屋の端に順番に並べたり、

開きっぱなしだった本を棚に戻したり段ボールに詰めたり、

『そんなに片付けなくてもいいですよ？』

安「いや、だってAと一緒に過ごすんやもん。Aにとって快適な場所にせな」

はいここ座って、とソファーに案内され、

疲れたやろ？って言ってはコップに麦茶を入れて持ってきてくれたり、

『……ありがとうございます』

安「なんか、Aに敬語で話されると昔思い出すわ～」

ニコニコと笑って手を握られる。

『昔？』

安「うん、僕らはずっと前から一緒やったんよ？
それも忘れたん？」

『………』

安田さんは覚えてるのに、私は何も覚えてないんだなぁ……

少し悲しく、少し寂しく。

安「もっと色んなこと話そ？」

握られた安田さんの手は冷たく優しかった。

…