十七頁目 ページ18
「ハッ」という空気を切るような音だけが喉から出て、次の瞬間には視界がぐるりと反転し天井が目に映る。
心臓を鷲掴まれたかのような悪寒が全身を支配して上がったはずの体温は一瞬にして冷めきった。
ドン!という床に肉がぶつかる鈍い音が耳に谺し、ぶつかった際の衝撃が私の体を走り回る。
思わず呻き声が出たが、私以外にも呻き声を上げる者がいた。
「イソップくん!?」
彼はうつ伏せの状態で私の下敷きになっていた。すぐに体を退かして咳混む彼に声をかける。
「ちょっと!大丈夫!?」
もし自分のせいで彼が骨折していたりしたら、打ち所が悪く神経がダメになっていたら……。と考えていると彼は咳込みながら床に手をついて「……痛いですけど……大丈夫です。」と言って木の破片を払いながら立ち上がってまた私の方を見る。
反射的に私は足が竦む。彼は思ったよりも背が高い。
どうしても私は彼を見る時に上を向かなければならないし、やはり上から見下ろされるというだけでも充分に威圧を感じる。
「肩」
「え?」
「肩から血が流れてる」
その指摘に従い左肩に手を当てるとぬるりとした感触が手に伝わる。
その手を見れば赤い血がべっとりと付着していた。
肩を負傷した事に気付いた瞬間、鋭い痛みが肩に走る。「ゔ、」と言う呻き声が口から漏れる。
傷口はジクジクと熱を持ち痛みを主張し続ける。流れ出る血を抑えようと傷口付近を右手で圧迫しようとすると彼から制止される。
「不用意に触らないで。化粧箱の中に布ぐらいなら入っていますから、待っててください」
彼は化粧箱を廊下から持ってきて中身を漁り始める。
私はそれをただ茫然と見ていた。
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野菜 - 感想ありがとうございます!こんな褒められると思ってなかったので嬉しい限りです。引き続き頑張りますので是非たのしみにお待ちください! (2019年6月27日 16時) (レス) id: d6aefcc85a (このIDを非表示/違反報告)
saniwanotori(プロフ) - 背景推理からとても丁寧に物語を構成されていて読み応えがありました。不穏な描写の表現も天才的でドキドキしながら読ませて頂きました。こんなに面白くてとても素敵な作品に出会えて幸せです!切実に消さないで欲しいと思いつつ、続きを楽しみにしております (2019年6月26日 23時) (レス) id: 9faba28f95 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:野菜 | 作成日時:2019年6月22日 13時