明日の夕飯もままならない状態なんだ。 ページ1
「ああ、今日も退屈だなぁ。どっかの大陸で革命起きないかなぁ
。」
倉戸尚は誰にも気づかれない声で呟く。その為、ぼんやり窓を見つめる尚に誰一人気づかない。
数時間後、帰りのホームルームが終わると尚は一直線で靴箱へ向かう。
「僕の給料がっ」
と、言いながら。
尚は家とは反対方向の古ぼけた本屋に向かった。
本屋に着くと、尚は裏口から挨拶もせずにずかずかと入った。中には廊下があり、つきあたりに行ったところで右側の扉を開けた。
「空見上げればひとつの光あり。
花散れば新たなる生命あり。
夢覚めるまでこくりお眠り。」
部屋の真ん中にある椅子に30代から40代くらいの男が座っている。
「ねぇ、藤さん。それちょっと前にも詩ってたけど何?マイブー
ムなの?」
尚が不機嫌そうに聞くと、藤と呼ばれた男はよくぞ聞いてくれたと言わんばかりに満面の笑みを浮かべた。
「ああ、この詩は昔、母が教えてくれたんだ。寝る時に良く詩っ
てくれたなぁ。子守唄ならぬ、子守り詩だね。」
「ふーん、でも、僕は藤さんがずぅっと詩う
おかげで覚えちゃったよ、無駄に記憶力を消費した。」
もっと不機嫌になる尚。まるで、火に油を注ぐの手本のようだ。
「ところで。ねぇ、藤さん。そろそろ仕事くれない?今、金欠で
さぁ。明日の夕飯もままならない状態なんだ。」
「なんだ、仕事か。それなら、いい仕事がある。しかも、給料は
前回の倍だ。どう?」
尚は顔を膨らませる。
「えー?どうせ、危ない仕事でしょう?厭だよ痛い思いするの。
」
「だが、とても良い交渉だと思わないかい?君は給料が倍、私は
面倒な案件をきれいさっぱりできる。これぞ、winwinだ」
尚は下を向いて考え込む。それを藤は生暖かい目で微笑む。
「そんなに言うなら仕方ない。でも、給料倍だからね?!でもさ そんなに危険な仕事なんて一人でできるの?」
「ああ、実はこの件、君だけに任せるわけじゃあない。とても忠
実な子を見つけてきたんだ。入ってきてくれる?」
藤が言うと扉が開き制服姿の青年が入ってきた。
「早木咲也くんだ。仲良くしてくれよ。」
咲也は自慢気に言う。
「咲也だ!齢は17。よろしくな!」
「…はぁ…僕が嫌いなタイプだ…」
「ああん!?俺もお前のこと今めちゃくちゃ嫌いだわ!!だが、
仕事だから仕方ねぇ!!ほら、行くぞ!!」
尚は襟をつかまれ引きずられていく。その様子を藤は手を振って見届ける。
「無事に終わればいいのだがね…」
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作者名:ルーキー田中 | 作成日時:2022年3月4日 21時