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時は過ぎ、2年生の春。白州君とは今も連絡が続いているくらいには関係が続いていた。
そんなある日の夜。夕食とお風呂を終え、ベットに横になっていたところにスマホに着信が入る。
(…え、白州君？！)
これまで何気ない会話がメッセージで続いていたが、電話がくるのは初めてだった。無機質に並ぶ"白州健二郎"の文字に、どうしようもなく鼓動が早まっていく。
少し震える指で応答ボタンを押せば、"…あ、今大丈夫だったか？"と。いつもとは違って耳元に聞こえる彼の声に、やたらドキドキしてしまう。
「どうしたの、珍しいね、通話なんて」
メッセージを見返せば、他愛のないやりとりが続いているだけだった。通話の履歴はもちろんなかった。
「…俺、レギュラーに選ばれた」
電話の向こうから聞こえてきたのは、少し嬉しそうな声色で放った、その言葉だった。
「…えっ！！レギュラー！？おめでとう！」
直接見てきた訳ではないけれど、白州君がずっと努力してきたことはよく知っていた。そんな彼がレギュラーを勝ち取ったのは、私にとってもすごく嬉しいことだった。
「どうしても伝えたくて。…夜遅くに悪いな」
「えっ」
予想もしていなかったその言葉につい声が出てしまった。確かに今は春休み中で会えないとはいえ、メッセージでもいいところをわざわざ電話で…伝えたかった、なんて。
白州君との関係が良好であることは自負していた。もちろん嫌われてはいないだろうし、わざわざメッセージを続けてくれていることを考えれば、少なくともよく思ってくれているとも。
(勘違いしちゃうって、こんな…)
この1年間で、誠実で目標に向かって直向きに努力を重ねる彼に私はいつしか惹かれていた。…ああ、好きだな、と。
そんな彼にこんなことをされてしまっては、さらに惹かれてしまうほかなかった。
(…ずるいよ、白州君。)
どうか、そうやってわざわざ報告してくれるのが、私だけだったらいいな…だなんて、少しわがままな願いが、私の頭を支配していた。
「伝えてくれてありがとう。すっごく嬉しい。私も練習頑張る。これからもずっと応援してるから」
「ああ。ありがとう。俺もさらに上を目指すよ」
「さすがだね、白州君」
初めての電話は、私にとってずっと記憶に残る宝物だった。
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作者名：やまなな | 作成日時：2024年2月29日 1時
