声ふりたてて鳴く郭公 ページ9
五月山こずゑをたかみ時鳥 なくね空なる恋もするかな
〜 後日談 〜
『辻、』
「お!Aちゃんの恋は叶ったん?」
朝一、劇場の楽屋に入ると眠そうな辻が一転、私を見てニヤニヤする。
『聞いとらんけど、ご本人登場なんて』
「言ったら帰るやろ」
ぐうの音も出ない...
『まぁ、、解決したし、叶いました。ありがとう』
「おめでとう。クレープ奢りな」
『うん。リリーさん呼んだのは見兼ねて?』
「ちゃうよ、本人のご希望」
そう言って辻はひとり昨日のリリーさんとのやり取りを回想してる様子だったけど、詳しく教えてくれなかった。
◇
あれからやっと時間が取れ、2人でご飯。
『リリーさん』
「ん?」
『辻になんて言ってあの日来たんですか?』
「それは辻との秘密やから話せん」
『じゃあ...なんでご飯の時、絶対終電1本前だったんですか?』
ビールを一口飲んで私の質問にポツポツ言葉を紡ぐリリーさんは
「ルールっていうか、、自分に厳しくして時間決めとかんとAのこと帰せずに良くない関係になってまうのが分かっとったから。
それは、絶対に避けたかったんよ。ちゃんとAとは段階を得てこうなりたかった」
と、照れくさそうに笑う。
身体の関係だけでもいい、なんて思ってた私の方が不純で欲まみれで子供だった。
必死に気持ちを押し殺していた頃が嘘みたいに幸せな日々。
どうしよもなく不安になることもあるけど、リリーさんは沢山言葉をくれるから、大丈夫。
「今日はそのルール、破るけどな」
不敵な笑みにも、きゅんとしてしまう私はやっぱり重症です。
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作者名:裕 | 作成日時:2022年3月12日 12時