なくね空なる恋もするかな ページ8
五月山こずゑをたかみ時鳥 続き
「で、リリーさんと飯行かんの？」
『行きたいけど気持ち爆発しそうで怖い』
「Aが断った時リリーさん悲しそうな顔してはったで？」
『やめてよ、勘違いして諦めれんなる』
話しているとハイボールを飲む辻のスマホが鳴って「ごめん」と謝って電話に出た。
「はい、すぐ向かいます」
それだけ言ってスマホを置くと
「ごめん急用。代わり呼んだるから」
と荷物をまとめて席を立つ。
『ありがとう』
ひとりになり、お酒のせいもあるのか悲しくなって涙が止まらない。どれだけ泣いても報われないだろうけど、今は泣きたい。
個室で良かった、と思った時だった。
「お疲れ、え、」
『ぇ、、リリーさ、、』
どういうこと？！いない辻に向かって心の中で叫びつつ
『すみません、ちょっと、お手洗い行きます』
メイクを直して、辻に電話をするけど出る気配はない。仕方なくリリーさんが待つ個室に戻る。
『すみません、ちょっと色々あって』
「それって俺に言えんこと？」
返事が出来ずにいるとリリーさんはまた質問を投げかけてくる。
「最近俺のこと避けとるよな？」
誘う度に辻と約束しとる、って。俺のこと嫌いになったん？というリリーさんの顔が見れない。
『いや...』
「俺、Aが気悪くするようなこと言ってもうた？それやったらほんまにごめん」
リリーさんは何ひとつ悪くないのに頭を下げる。
「Aに嫌われたら俺、どうしていいかわらかん」
顔を上げたリリーさんと目が合う。頭を人差し指で掻きながらそう呟いた。
『リリー、さん』
「ん？」
『すみません、私、リリーさんのこと避けてました。でも嫌いになった訳じゃなくて、、』
「ほんまに？」
『はい、』
「良かった...めっちゃ考えたわ、何かしてもうたかなって。で、俺を避けた理由は？」
ジーッと見つめられ、嘘をついたらバレてしまいそう。本当の事を伝えよう。もう、どうにでもなれ！その時はよろしく、辻！
『リリーさんと、今以上の関係になりたくて、、でも、絶対叶わないから、、リリーさんへの想いを、断ち切るため、です』
「...Aの悪いとこやで、なんでも自己完結してまうの」
『う、リリーさん前もおっしゃってましたね...』
「俺のアピール足らんかった？こんなに好きやのに」
『足りてないから、こうなったんです』
「ごめんごめん。好きやで、A」
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作者名：裕 | 作成日時：2022年3月12日 12時
