験なきものを思はずは一坏の ページ21
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「「「「かんぱーい！！」」」」
ゆずるさんに声をかけられ集まった20人近くの芸人での飲み会。
「A、飲み過ぎ注意な」
『はーい』
飲みはじめて30分くらいだろうか。将企さんはそれだけ言うと向こうにいるタグさんの隣に腰を下ろした。
「リリーさん、Aさんの横に来ないの珍しくないですか？」
劇場の楽屋では必ず私の隣に来る。スマホをいじる時も寝る時も、私の隣に来る。いつの間にか当たり前の楽屋風景になった。
「今日久しぶりに会うって言うてませんでした？」
『1ヶ月ぶり』
隣に座るエルフの2人と話しながらちみちみお酒を飲む。
沢山集まる飲み会でわざわざ彼女の隣に来ないとは思ってたけどさ。
2時間が過ぎてもまだ盛り上がってる。
私の隣にいたエルフは別々のテーブルへ移動して、何人か入れ替わり立ち替わり、
「A、」
『将企さぁん！』
ジョッキを持った将企さんがようやく隣に腰を下ろした。
「何杯飲んだん」
『ビール3杯とぉ、酎ハイ2杯です！将企さんも飲んでますかぁ？』
将企さんの腕に絡みついて顔を覗き込むと、グッと肩を押されて離された。
「飲み過ぎやろ。あかん、もう帰るで。荷物こんだけ？」
私のバッグを持つと、腕を引っ張られて立ち上がることになった。
『ぇ、お酒、』
「あかん」
手を掴まれゆずるさんの元へ。
「ゆず兄すんません、Aが」
『ゆずるさぁん、まだ飲みたいのに将企さんがぁ』
「また誘うたるから」
『、、はぁい』
「じゃあ、お先失礼します」
『失礼します』
ゆずるさんに挨拶して外に出る。
風が冷たくて気持ちいい。
「タクシー捕まえるか、」
『歩きたい、』
そう言うと手を繋いでくれた。
5分程歩いたところで立ち止まる。
『将企さんすみません』
「何が？」
『私酎ハイ1杯しか飲んでません。全然酔ってないです』
「え？嘘やったん？」
『1ヶ月ぶりに会えたのに...早く2人になりたくて、すみません、せっかくの飲み会だったのに、私』
「ふは、演技上手すぎやろ」
将企さんが隣に来た時、今しかないと怒られる覚悟で酔っ払ったフリをした。見抜かれるかと思ったけど本当に酔っ払いだと思ったらしい。
『怒ってませんか？』
「怒らんよ、あの時のAの色気、他のやつに見せたないと思って」
『え、やだ、酔ってます？』
「Aよりは酔っとるかもな。我慢出来んからやっぱりタクシーで帰ろ、抱きたい」
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作者名：裕 | 作成日時：2022年3月12日 12時
