春の心はのどけからまし ページ6
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「昨日Aさん薬指に指輪してへんかった？」
「してましたね」
「やんな、やっぱり彼氏おるよなー」
隣のソファに座る辻と阪本の会話。
Aの名前が聞こえてスマホの画面をスライドさせていた指の動きが思わず止まる。
「リリーさんってAさんと仲良いっすよね？」
「ん？あぁ、まぁ」
「指輪誰から貰ったとか知ってます？」
「、、いや」
辻にいきなり声をかけられ煮え切らん返事をしてしまったせいで怪しまれて逃げるようにトイレに立った。
楽屋に戻ると、辻と阪本の周りに更に芸人が集まってやっぱりAの指輪の話をしとる。
「俺実は結構Aさんガチで狙っとったのに」
という色んな声がして、少し優越感に浸ったもののまた現実に戻ってくる。
誰がAに指輪をあげたん…？
最近忙しくて2人の時間はLINEと電話のみ。
今日劇場一緒やから、夜は久しぶりに2人で過ごそうって昨日約束したばっかやのに...
Aが二股とか、そんな事せんのは勿論わかっとる。
信頼しとる。
けど、、
『おはよう、どうしたの？皆集まって』
「Aさん！」
モヤモヤ考えとるとAが楽屋に入ってきた。
「あの」
辻に背中を押されて一歩前に出たケツが
「その指輪誰に貰ったんですか」
と口にすると、楽屋が静まり返る。
『え？この指輪？』
「はい」
『知りたい？』
少し離れたソファからAを見つめると、目があって優しく笑った。
『この指輪ね...父が母に贈った婚約指輪なの』
その言葉を聞いた芸人は止めとった息をはーっと吐いて、また騒がしくなる。
俺もめちゃくちゃ安心したけど、こいつらみんな狙っとるってことやんな...
「A」
「はい？」
Aの前で立ち止まって、一息ついて
「焦った...」
そっと抱きしめると、また一瞬楽屋が静かになって騒ぎ出す。
「えっ？！」
「リリーさん？！」
「ちょ！どういうこと？！」
『あ、あの、リ、リリー、さん？』
「将企やろ。Aは俺のやからな」
「「「「「えええーーーっ！！！」」」」」
腕の中の真っ赤なAが俺を見上げて『バカ...』と呟く。
別に隠しとったわけちゃうけど、誰かがちょっかい出す前に、見せつけとかんと。Aは俺のやって。
しかしドキドキさせられた...
「夜、覚悟しといてな」
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作者名：裕 | 作成日時：2022年3月12日 12時
