嵐吹く三室の山のもみぢ葉は ページ15
.
1期下の後輩であるリリーと付き合って半年が過ぎた。
その気はなかったのにリリーに猛アタックされているうちに、すっかり私も好きになってしまった。人間って不思議...
「終わったね、なんとか」
『ありがとね、私全然ダメだったな...』
「私がダメな時Aが頑張ってくれるじゃん。カバーし合ってこ」
大きな番組の収録、相方が頑張ってくれて無事に終わったけど自分の情けなさに泣きそう。
最近有難いことに色んなお仕事を頂いて忙しい毎日を過ごしてる。けど正直この変化についていけてなくて、
お互い忙しくて会えてないリリーに...会いたい。
「Aさん？何かありました？」
『ごめんね、遅くに。寝てた、よね？』
「いや、これから寝ようかなって」
寝る前に我慢出来なくなって電話した。
『明日は？』
「取材と収録が何本かと夜にイベントです」
『相変わらず忙しそうだね』
「Aさん達も忙しいやないすか」
『そうだね。有難いけど...自分を忘れちゃいそうで、私が望んでたのって、こんな生活だったかなって...ごめんね、こんな話』
恋人である以前に後輩のリリーにこんな弱音吐いて、ますます情けなくなって泣きたくなる。
「むしろ嬉しいです、Aさんそういう事言わんから」
『本当は...会いに行きたかったけど』
「僕はAさんの恋人ですよ？迷惑なんて思わないから、もっと甘えてください」
『ん、、ありがとう。次からそうする。じゃあ、おやすみ』
あの電話から2日。
収録前、楽屋で寂しさを抱えつつアンケートを書いているとコンコン、とドアがノックされて返事をする。
「Aさん！」
『リリー！びっくりした、、』
勢いよくドアが開いてリリーが入ってくる。いると思っていなかったから驚きと喜びで感情が昂るも、ここは局の楽屋で、トイレにいった相方もいつ戻るか、スタッフさんがいつ来るかわからないから冷静を装う。
「Aさん…！」
『え、ちょ、リリ、楽屋、誰か来る』
立ち上がった私のもとに来てギューっときつめの抱擁をされて戸惑いつつもリリーの背中に手を回した。
「Aさん」
楽屋でリリーに「今日家に泊まりに来ませんか？」と誘われたのでお邪魔すると、玄関が閉まるより先に抱きしめられる。
『鍵、締めないと』
「お願いがあるんですけど、聞いて貰えますか？」
この様子は話を聞かないとここから動くことは出来なさそう
『どんなお願い？』
「2人の時は将企って呼んでください」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 194人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：裕 | 作成日時：2022年3月12日 12時
