なにそこの児のここだかなしき ページ1
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「そのアイドル好きやった？」
「友達に薦められてハマっちゃった」
Aの部屋、すっかり定位置になったソファの左側。
「ふーん」
隣に座って、真剣にテレビに映るそのアイドルを見とる。
Aの横顔好きなんよね。
って、ちゃうちゃう
「A」
「ん？」
番組が始まってからずーっとテレビに齧りついとった顔が、ようやく俺の方に向いた。
「せっかく一緒におるんやから、」
「濱家さんのが移っちゃったの？」
俺から出る珍しい言葉にクスクス笑うとテレビを消した。
半年前に濱家夫妻と4人で食事をして以来、奥さんと仲良くなって定期的にお茶して話を聞いたり、色んな相談したりしとるらしい。
「久しぶりに会えたんやで？」
「ん、ごめんなさい」
素直に擦り寄ってくるAを抱きしめると、またクスクス笑いだす。
「将企くんて、付き合ってから変わったよね？」
「ほんま？どこが？」
「LINEの返信がマメになったでしょ、今みたいに構ってちゃん発動することが増えたでしょ、あ！あと痕付けるようになったよね、仕事の時大変なんだよ？せめて鎖骨にしてね？」
あ、鎖骨ならいいんや
指を折りながら話していく。
これはちょっと不利な展開かもせん...
「私、将企くんのこと、不安にさせてる？」
「え？」
少し潤んで伏し目がちに俺を見つめてくる。
想定外の質問にびっくりして「いや」と咄嗟に出てその後が続かんでおると
「本当のこと言って欲しい。直すから。将企くんと、ずっと一緒にいたいから、」
そこまで言って、耐えきれんかった涙が俺の腕に落ちた。
「ごめん、俺の方が不安にさせとったな、大丈夫。Aに直して欲しいとこなんかひとつもないんよ」
「ほんとに？」
「今やって痕付けるな、やなくて鎖骨ならいいとか」
「...隠すの大変だけど将企くんに愛されてるなーって、思えて、、好き、だから、」
泣いとったのに、今度は照れとる。
ころころ変わる表情も堪らなく好き。
「じゃあ、見えんとこにならいっぱい付けていいんよね？」
「え？あ、ちょ、」
不安にさせんように、これからも沢山愛したるから。
「え！将企くん共演したの？！」
テレビに映る俺とアイドルの姿に一瞬驚いて、すぐに切り替わる。
「ね！どうだった？本物！！」
「...悔しいけど顔も性格も最高に良かった」
「..ふふ。将企くんの方がずっとずっと大好きだから大丈夫だよ？」
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作者名：裕 | 作成日時：2022年3月12日 12時
