君がため惜しからざりし命さへ ページ28
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「Aさん今日も可愛いっすね」
「これやるわ。A欲しい言うとったやろ」
「A、飯行かへん?」
「Aちゃん、ー 」
あ”ーっ!もう!
色んな芸人に絡まれても嫌な顔せずに笑顔で対応するAを大楽屋の隅で見とって思わずイラつく。
どうしても見てまうのは
イラつくのは
好きやから。
『…男の人ってみんな浮気するんですか?』
「どうしたん、急に」
忘れ物を取りに静かな楽屋に入るとAがソファに膝を抱えて座っとって、俺を見るなりそう言ってきたのが
はじまりだった。
『彼氏に浮気されて、別れました。浮気する男の気持ち分からんって言ってたのに、』
舞台でも楽屋でも、笑顔が眩しい、と言われるくらいのAがこんなに落ち込んで、消えそうな声で喋る。
「そんな男別れて正解。今日はリリーさんが特別に付き合うで」
頭に手を置くと涙目で『お願いします』と言った。
いつも笑顔のAがこんなになるくらいの男ってどんな奴なんやろう、、
ふつふつと沸いた嫉妬心に
俺はAが好きなんや、と気付いた。
『リリーさんと飲むの、あの日以来ですよね?』
「誘いたくても既に声かけられとるんは誰?」
『私が悪いんですか?!』
ケラケラ笑う表情から、もう吹っ切れとることがわかる。
『リリーさんって沢山の女子を勘違いさせてません?最早悪魔ですよね?』
「なんなんそれ」
『目の前にいるのにLINEして、秘密のやりとりって感じで、、ドキドキしちゃいました』
「Aの隣誰かしらおってゆっくり話せんやろ」
少しは俺のことも気にとめて欲しい。その気持ちで、って乙女か俺は、、
『リリーさんになら、浮気されてもいいなぁ〜…へへっ』
帰り道、上機嫌なAは同じ轍を踏むような事を口にする。
「俺は浮気せんよ、Aの為なら命も惜しないで」
『どうしたんですか?急に』
「俺はAが好き。やから、」
『え、ちょっと待ってください、』
驚くAの顔が街灯に照らされる。
「ゆっくり考えてくれればええから、」
『いや、あの!私も、リリーさんのこと好き、だと思います』
「ふは、そう言われたのは初めてやわ」
『今私、すっごくドキドキしてます。これって、好き、であってますか、、?』
「あっとると思うで」
やっぱり
命が惜しくない、は撤回させて貰おう。
ずっとAの隣におりたいから
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作者名:裕 | 作成日時:2021年7月12日 1時