コイノウタ (ページ19)

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乱れそめにしわれならなくにページ19

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「おつかれー」

「かんぱーい」

手に持った缶を軽くぶつける。

「はぁーっ！うめぇ」

「おじさんくさいんやから」

「もうオッサンやでええんよ」

キンキンに冷えたビール片手に柿ピーをつまむ清水はオッサンと言うけど、、こんなかっこよくて色気のあるオッサンおる？

なんて、こんなこと口が裂けても言えん

大好き、だなんて気持ちは以ての外。

「また違う女の子と歩いとったらしいな！」

「あかん？」

「…いや、いいんやけどさ、別に」

全っ然良くない！！！

でも言えん

同期の清水とは昔から同期というより男友達みたいな

そんな感じで接してきたから、今更そんな…
　

いつからか呼ばれるようになった"リリー"というあだ名
ちょっと照れ臭くて呼び方を変えるタイミングを見失った

おかげで、いつまでも友達感が漂ってしまう

「そう言うAやって、こないだ見たで」

「え？」

「男と歩いとったやん」

私は、いつからか清水しか見とらんよ

　

「あー、あいつね」

その男って、間違いなく従兄弟なんだけど

嫉妬して欲しくて嘘ついた。

「Aにしてはえぇ男やったな」

「失礼な」

「まぁ、顔は可愛いもんな」

清水が嫉妬する訳ないのにね

嬉しい筈の言葉なのに、苦しい。

「ん…」

目を開けると、清水はクッションを枕にして寝とる。

こうしてよく私の部屋で駄弁って飲んで、そのまま雑魚寝することも多い。

そろそろこの関係から抜け出したい

いつまでも素直になれない自分が嫌い

可愛くないことばかり言う自分が嫌い

大好きって、伝えたい

こんなに好きで心が乱れとるの、清水は知らんよね。

どうしたら私の気持ちを伝えられるんだろう

そう思っていたら目にはいった、刺繍糸。

刺繍に挑戦しようと思い立って買ったものの、封を開けてそのまま放置しとる道具たち。

その中から赤い刺繍糸を取り出して

そっと清水の小指に結んでみる、、

頭を撫でられる感覚で目が覚めた。

「Aも案外乙女なんやな」

清水の柔らかい表情と声、腕が私の頭に伸びとる、、

「えっ？」

「これ」

「あ、」

血の気が引くとは、この事なんだと思ったと同時に

「久しぶりに楽しい恋が出来そうやわ」

と微笑まれた。

乱れる心臓の音が、うるさい

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