コイノウタ (ページ35)

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霧立ちのぼる秋の夕暮れページ35

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「Aー！置いてっちゃうよ！」

『すぐ行くからー！』

教室の片隅、俺の好きなAちゃんは季節関係なく部活前のこの時間に必ず日焼け止めを塗っとる。

友達と喋りながらその姿をチラチラ見とると、日焼け止めのキャップに腕を当てたAちゃんが

『あっ』と声を上げた。

「はい、どうぞ」

俺の椅子の横に転がってきたキャップを拾って渡す。

『ありがと、清水くん』

キャップをしめた日焼け止めを握ったまま、カバンを掴んで教室を出て行く。

「Aちゃんのこと好きやろ」

「見すぎやって」

「うるせ」

「やったな！」

「チャンスなんちゃう？」

席替えで隣同士になった俺とAちゃんを見て、休み時間にやいやい言われたけど…確かにチャンスかも知れん。

『将企くん、って呼んでもいい？』

「ええよ」

席替えして1ヶ月、Aちゃんからの思わぬ言葉に驚きつつ、距離が縮まっとる事実に嬉しくなった。

『ありがとう、将企くん』

ニコッと微笑むと髪が揺れる。

今日もAちゃんからは日焼け止めのチープな香りがして
、、くらっとする。

好きやなぁ。

『将企くん！一緒に帰ってもいい？』

部活終わり、運悪く顧問の長話を聞かされ一人で帰ろうと校門を出ようとしたところだった。

「1人でつまらんなって思っとったとこやった」

顧問に感謝、やな。

『明日席替えやね、寂しいなぁ』

「あっという間やったな」

『将企くん』

「ん？」

『私ね、将企くんのこと好きだよ』

突然の告白に思考停止

「俺もAちゃんが好き」

何か言わんと、と口を開いたら出てしまった気持ち。

『それ、は、クラスメイトとして？』

「ちゃうよ、Aちゃんと付き合いたい。付き合ってください」

予定になかったシナリオに焦ったけど、俺の言葉を聞いてボッと赤く染まったAちゃんを見て安心した。

『お願い、します』

「ありがとう」

照れ臭くて、顔を見合わせて笑った。

Aと付き合って数ヶ月、

昼過ぎから窓の外は白いモヤがかかり始めた。

「凄い霧」

6限目前の休み時間、朝から引かれっ放しのカーテンの中に入って窓の外を見る。

『真っ白』

隣に立ったAに側やったな、席。

と思いながら

温もりと天気関係なく漂う日焼け止めの香りにドキドキする。

賑やかな教室内で

カーテンにまぎれた俺とAだけの世界。

そっと手を繋いだ

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