聞こえる男【JM】２

父と ページ20

母と話したあと 父と二人で飲んだ。




「仕事はどうなんだ」



JM「それなりにやってるよ」






仕事の話や世間話なんかして

久しぶりにゆっくりと向かい合って話した。








JM「ねぇ」






JM「心の声ってさ、どうやったら聞こえなくなる？」




「さぁな」






やっぱりそうだよな。



子どもの頃 何度も相談した。


いつも、ハッキリとはわからないと言われる。





JM「聞こえなくなった時 嬉しかった？」



「嬉しかったか。どうだろうな。不思議な感覚だったよ」



JM「聞こえないってどんな感じ？」



「普通だよ今は。これに慣れたからな」



JM「ふーん。俺にはわかんないや。

　聞こえるのが当たり前だから」




「つらいだろ」




JM「人と上手く付き合えないからね。
　
　ずっと距離をとってきたし」




「俺もそうだったな」






父さんとこんなふうに話したことは初めてかもしれない。


今となっては唯一の俺の理解者なんだよな。






JM「なんで母さんと付き合えたの？

　 聞こえなくなったの1年くらい付き合ったときって‥」




「‥母さんが裏表のない人だったからな」




JM「そっか」



「いろいろ嫌な思いはさせたと思うよ」



JM「だよね。絶対嫌だよね普通」





「でも、それを乗り越えたら、わかることもある」







なんだろう



乗り越えたらわかること？






「そのときにもしかしたら

　能力は消えてくれるのかもな」






JM「父さんは、そういうタイミングだったってこと？」



「まぁな」





どういう意味なんだろう。


俺とAさんにはまだまだってことか。





よくわからないけど、

父さんたちと話してみて 少し希望がもてた気がした。

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