偽婚しましょう【TH】

尋問 ページ45

家についたら、案の定真っ暗だった。




さっきの光景は見間違いじゃなかった。







灯りをつけて、淡々といつものルーティンで動く。



何も考えられなかった。






ガチャっと鍵の回る音


帰ってきた。





どこかでほっとした。








『ただいま』



TH「おかえり」



『あ、先だったんだ』



TH「うん。今帰ったとこ」



『おつかれさま』




TH「Aちゃんも遅かったね。どうしたの」









こわい。

俺は尋問してるのか。








『ああうん。ちょっと用事があって』












用事ってなに。

突っ込んで聞いていい？






TH「そうなんだ。遅かったね。先にいると思ってた」



『うん。テヒョンくんも遅いって言ってたから。

　ご飯食べた？』



TH「残業の間に軽く食べたよ。Aちゃんは？」



『うん、食べてきた』





コートをかけたり、荷物を片付けたり

何でもないようにAちゃんは動いてる。









そっか。


あの人と食べたんだ。









TH「どこで食べたの？」




『え ああ あそこのカフェ うちの図書館の近くの』




TH「一人で？」




『‥うん』











嘘




嘘つくんだ。









それって、知られたくないから？

隠すことなんだ。




ショックで頭に血が昇ってる。








TH「それにしては遅かったね」



『そうね』



TH「一人でなにしてたの？」



『なにって‥普通にご飯食べてコーヒー飲んで‥

　ごめん先にお風呂いくね』











俺見たんだけど






言いたいけど、言えない。



聞いてどうなるの。







俺はAちゃんの ただの同居人。







Aちゃんがどこで誰と会おうと何をしようと
干渉する権利はない。







ただ普通に、友達？って聞けばいい？








聞けないよ。


だって絶対に友達じゃないから。



わかるよ、それくらい。




こわいんだ。





本当のことを知るのも怖いし


嘘をつかれるのも怖い。






今なにか言えば、とんでもないことを言ってしまいそうで。



下手したら、他の人といたことを咎めてしまいそうで。

嘘ついたこと、責めてしまいそうで。




お風呂から出てきて、お茶を飲んでる顔は

どこか元気がない。



でも俺にはわからない。



Aちゃんは嘘をつくから。






『お先にごめんね。なんか疲れた。

　先に寝るねおやすみなさい』





何も言えなかった。

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