偽婚しましょう【TH】

憧れ ページ37

『帰ろっか』


TH「トイレ行ってくるわ」



『外で待ってるね』





食事を終えたらもう暗くなってた。


日が暮れるのが早いな。






トイレを済ませて店の外へ出たら


Aちゃん 知らない男の人と話してる。





ん？話してるんじゃなくて、誘われてる？






近づいて確信した。


スマホもって何か聞かれてる。





TH「おまたせ」



『あっ』





なんかムカついて、男を睨むと去っていった。






TH「なんだった？」



『ID教えてってしつこくて』




TH「急に？」



『なんか一目惚れしましたって。怖かった』




TH「ごめん一人にして」




キレイなんだよねAちゃん。


今日はまた格別に。








そこらに歩いてるレベルじゃないと思うよ。




でも、こうやって声かけられるとムカムカする。












TH「帰ろうか」










なんでだろう。




手を繋いでしまった。










勢いだったと思うんだけど。








一瞬戸惑ったようにこっちを向いたAちゃん。






TH「うちの奥さんはモテるからね」



『え？』



TH「危ないから繋いで帰っていい？」



『あ うん』






よかった。


断わられなかった。






ドキドキする。




手繋いでる。






TH「手冷たいね」



『うん。冷え性』



TH「寒いしね最近」




案外普通に話せてる。







別にいいよね。


偽でも夫婦。




俺たちは事実婚の夫婦。




『キレイだね〜イルミネーション』



TH「うん。カップルだらけだね」


通りを歩くと、キラキラして

なんか切ないような愛しいような




胸がつまるような気がした。







『あ あの家見て。木がイルミネーションされてる』


TH「うわぁすごいね」



『いいなぁああいう家』



TH「ああいうのしたい？」




『庭に木とかいいよね。冬はああやってライトアップして

　あんなの理想だな』




TH「うん」




こういうのに憧れるんだ。




いつか結婚して 子どもとか生まれて

こういう一軒家に住んでるAちゃん



想像つくな。









その隣にいられたら






そこにいる自分を想像してしまって







ハッとした。






混同してる。





俺は最近 偽婚なのに本当の結婚と

混同してる気がする。





好きなのかな。






一緒にいるから、そんなふうに錯覚してるのかも。





でも、この手は離したくなくて

家までしっかりと繋いで帰った。

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