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山田は俺より何倍も繊細なくせにすぐ突っ走る。

俺に対して言ったことも、数秒後には後悔したり。
ほら、今もそう。


「なぁ、そろそろ出る?」
「…うん」

「ん?」


ツンツン、ストローの袋のはしをツンツンつつく。
目が虚ろすぎて怖いんだけど。


「りょうすけ」
「えっ、」

「あはは、起きた」


本当、困った恋人だ。

俺は言葉にしないのは山田がこうして伝えてくれるからなのに。
だって同じなんだよ、思ってることが。

で、山田が考えてることは

俺より何倍も広くて深くてあったかい。
温泉みたいな、そんな風な。


「ほら、いこ?」
「…うん」


アイスコーヒーがカラになっても、
氷が溶けてまた水になる。

飴色の水。

きゅうと握った手は左手と右手。
そうすると白い指輪もどきが山田の手で見えなくなる。


「重いこと言っていい?」


「…その前フリいる?」


要らないよ、を暗に示して指を絡めた。
店に入ってからずっと、俺は山田と手を繋ぎたかった。

彼はリュックを肩に下げながら、俺の表情を伺う。
ひどいな、確信犯で言ってるわけじゃないんですけど。


「指輪付けさせるのも勿体なくなっちゃった」


「は?」
「いのおちゃんの指、あったかいから
冷たい首輪なんて、要らないんだよね」


ポツリと落としたまたクサイ台詞。

山田だから許すけど、他の男だったら鳥肌もんじゃね?


「…あ……そう…」


ただ、俺の指先は熱い。
俺はどこまで山田に惚れてしまってるんだろう。

やわく茶色に光る瞳が優しく垂れた。

どうせ頬が赤らんでいるのを見てほくそ笑んだのだろう。


ひどいやつ。


「今日何食べたい?」
「なんでも」


「もー、なんでもが1番困る」


手は繋がったままの俺と山田。
お会計を片手で済ませるスマートな仕草をぼんやり眺めるとそのまま外へ連れ出された。


「いのおちゃん」

「なに」


「ちょうちょって、世界一かわいいよね」


「は?」
「分かんなくていい」


もう夕方だ。
これからどこへ連れ出されるだろう。

羽根さえ持たない人間が、山田と居るとどこへでも行けると思える。


とはいえ、



「いのおちゃん」



温かい布団と愛情深い恋人がいるなら、
俺はどこでもいいのだけれど。






end.

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作者名:名無しの腐女子たち x他7人 | 作成日時:2017年3月16日 21時

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