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「…許したわけじゃないから」
「うん、気をつける」

また目を細めて嬉しそうに言う。
陽だまりの猫そのものだ。


「じゃあ、ひとつ提案です」
「なに?」


ふぅ、と呼吸を整えると真剣に彼を見た。


「今日の買い物付き合って」
「いいよ、いつものことじゃん」

「いのおちゃんに渡したいものもできたし」

「なに、渡したいもの?」

「そう」


いのおちゃんの手元にあるストローの袋。
まぁ今はこれで我慢してもらおう。

頬杖つく左手をツンツンとつつくと自然と伸びる手。
脈がドキリと音が大きく鳴って、

その薬指に袋を結んだ。
白い蝶々、手元にやわらかく。


「本物、買ってあげる」


「…え……あ…」


「早いかもしんないけど、心配性に保険くらいかけさせてよ」


「…お前ばかなの………」


真っ赤に染まったほっぺたと耳。
くさすぎ、と逸らされた顔がいじらしい。


「照れてる」
「うるせー、ばか」

「ばかじゃないよ、本気ですー」
「答えになってないから」


両腕をペタリとテーブルに付けてその上に顎を乗せて下から見上げるとこっち見んな!って怒られた。


照れてる、良かった。


「今日指輪買うまでそれ付けててよ」

「ゴミじゃん」
「だめ、付けてて」


白くて長い指に白い蝶々。
本当のほうはシンプルなのにしたかったけど、
こうやってアレンジきいててもかわいいのかも。

エアコンの緩い風でハタハタと羽が揺れる。

なんか本当に飛んでっちゃいそう。
行き先はどこだろ。


「山田」
「んー?」

「ねむい?」
「眠くないよ、

ただ

ちょっと後悔してるだけ」


今は蝶々でも、俺が買おうとしてるソレは物理的にも気持ち的にも激重。

今になって本当に嫌われたんじゃないか、
とふと思ってしまって。

指先でちょこんと、いのちゃんの薬指に触れた。


「いのおちゃん、指輪した途端消えちゃったらどうしよう」

「ファンタジー映画みたいだな、あはは」

「笑いごとじゃないから」
「本気?」
「そう」


俺と同じ視線になるようにテーブルにほっぺたをくっつけてまた声を上げて優しく笑った。


「重すぎて指輪だけ残ったりして」
「……気にしてんだけど」

「してたんだ」
「あーも、いのおちゃんいじわる」
「だって嬉しいんだもん」


周りには聞こえないような小さな声。
同じ視線で向かい合って。


この時間が愛おしいな、なんて。


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作者名:名無しの腐女子たち x他7人 | 作成日時:2017年3月16日 21時

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