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「俺に対して?」
きょとんと適当に返す恋人。
小首を傾げる仕草がここまで様になる成人男性なかなかいないと思うんだけど。
本当、自覚症状ないよね。
「昨日のこと、本当になんにもされてないの?」
「されてないよ」
嘘つけ。
ケツ揉まれてたじゃん。
軽く睨んで自分の主張を強めてみるけど、やっぱりぼんやりしてる。
かわいらしい白のニット帽が昼間の太陽を反射して淡く光ってさらにいのおちゃんのふわふわした雰囲気を強調していた。
「山田が心配するほど、俺か弱くないし」
「…ふぅん」
「!」
ため息をついて油断したいのおちゃんの手を引っ張ると、額にくちびるをピタリと当てた。
あらま、真っ赤。
「な、ちょお前なにやってんの」
「ほら、隙だらけじゃん」
「そんなの…」
「突然のことだから、って言われても説得力ないからね?」
俺の視線が痛いのか何も言えずに黙ってしまった。
立ち上がった俺と座ったままのいのおちゃん。
きゅるりとしたタレ目が自然と上目遣いになって、かわいらしさ倍増。
でも、分かってもらわなきゃ。
俺が居ない現場で変な輩に手なんて出されたらたまったもんじゃない。
あと、迷惑だからとか言ってそういうことされても我慢しそうじゃん?
「…んー、でもさぁ」
「なに?」
「俺浮気なんてしたいと思わないし、
もし仮に向こうが本気だったとしても靡かない自信しかないんだけど」
「……え」
「でもそう思ってもらえてるのはフツーに嬉しい」
フワリといのおちゃんの表情が緩まると、
今度は自分の顔が熱くなるのが分かる。
いのおちゃんを守るのは俺だって、そう自惚れてて欲しいと言われてるみたいでくすぐったい。
胃の中に落っことしたはずの甘いアイスといちごが口の中に残っているかのように甘い空気にふたりして包まれて、
いつの間にか椅子に身体を戻している自分がいた。
かわいいだけじゃない彼は、俺よりも上手なのだ。
口がうまくて、俺のことまで手に取るように。
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作者名:名無しの腐女子たち x他7人 | 作成日時:2017年3月16日 21時