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キッサキサテン ページ17

「例えば、ここにいるとするじゃん?」
「…はぁ」

「…聞かないといい加減怒るよ」
「……」


こうなると、山田は長い。
長年の経験上よく分かっていた。
ストローでカラリとアイスコーヒーの氷を回すと、
じっとりした目で綺麗な顔を見やる。

14:16

店に入って2時間経った。


「あの角度だったら、誰もが勘違いするでしょ」
「しねーよ。生憎俺には大きな胸もなけりゃ綺麗な足にも濃ゆいすね毛があります!」

「いーや、ダメ。いのおちゃんってばすぐ色目使う」
「使ってないから」


くだらない口喧嘩。
ファンの子が見たら幻滅しちゃうんじゃないかって少し心配になる。

だって、知念でも圭人でもなく俺とお付き合いしてるなんてさ?


「使ってないかもしんないけど、他人から見たらそうは思えないの」


さっきから語気を荒くする度に低くて怖い声になっていく。
あー怒ってる。

でもなんでだろね。

ずっと見てたい、なんて。


「分かる?…って、
聞いてないでしょ、いのおちゃん」
「うん、ごめん」
「もー…」


だってさ、こんなのただの嫉妬じゃんね。


思わず緩んだ口元を見逃さなかった山田はまたプリプリ怒り始めたけど気にしない。


「お待たせいたしました、
ストロベリーパフェです」


ほら、ね?


「うっわ〜…うまそ……」


魔法の呪文ですぐふにゃける。


「どーぞ、めしあがれ」
「いのおちゃんが作ったわけじゃないし」

「あはは、この前お返し渡しそびれたからお詫びです」

「…ありがと」


お目目キラキラ、こぼれ落ちそう。
そうそう、山田はそうじゃないと。


「いのおちゃん」
「ふぁ?」


「あーん」


細長いスプーンにバランスよく盛られたアイスとイチゴとスポンジ。
ぱっくり開けた口の中に解けていく甘味。
穏やかな顔した山田が目を掠める。


「おいひぃ」
「そっか」


こんなカップルっぽいことも男同士の癖に普通にこなして絵になる。


「食べ終わったら、続きね」
「えっ、なんで」

「…なんでって、いのおちゃんが話きーてないからでしょ?」
「うっ」

「俺、そこまで単細胞じゃありません」


美味しいパフェに失礼だから、となんとも酷いことを言うと黙々と口の中へパフェが消えていく。
驚かそうとこっそり注文した俺のちょっとした苦労もほぼ数秒の出来事として彼の胃の中へ消えてしまった。


「山田さ、過保護すぎ」
「なにが」

「…俺に対して?」

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作者名:名無しの腐女子たち x他7人 | 作成日時:2017年3月16日 21時

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