イベリス【ymin】 (ページ21)

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校門をくぐると山田のお目当て、サッカー部が朝練を行っていた。

「朝から結構厳しそうだね。」

「それなりに強豪だしね。」

キツそう…とあんぐりと山田は口を開けていた。

蛍光黄緑のパンツを履いている長身の男…
薮はキャプテンということもあり、それぞれ部員に指示を送っていた。

朝練は顧問がいないため、キャプテンや2年生が中心に練習を行っているためだ。

ふと薮と目が合った。

汗をたくさんかいているくせに泥臭さを感じさせず、いつも以上に爽やかな笑顔を向けてきた。

俺は特に笑顔ではないが、ひらひらと手を振り返す。

そろそろ行くか。

図書室で本を借りていた事をふと思い出した。

「山田。俺図書室に本返しに行くからもう行くね。」

「あ、うん。分かった。またお昼にね！」

山田が俺に向けてきた視線をグラウンドへと戻したのを見届けて、俺は図書室へと向かった。

図書室は三階北側の一番端。

私立の高校ということもあり、それなりに広く、高校生が読むのか分からない絵本から専門書まで、ラインナップは豊富だ。

「返却ですね、ではこちらにサインをお願いします。」

今日の図書委員はほっそりとしたメガネくん。

返却ノートへとサラサラとサインを記入し、

「ありがと。」

と微笑むと、メガネくんはボンッという音と共に顔を真っ赤にしてしまった。

薮や光がいれば誰にでも愛想を振りまくなと怒られてしまいそうではあるが、誰にだってよく見られたい気持ちはある。

惚れられても困るが、愛想がないと思われたくはないのだ。

普段より遅めに教室に入ったが、まだ誰もいない。

昨日の部活中に嫌なことを思い出したせいか、今日は夢見が悪かった。

席に座ったはいいものの、本を読む気にもなれない。

「…サボろうかな。」

たまに気分がのらない時は、空き教室でサボることがある。

それなりに勉強はできる方なので、授業に出なかったところで影響はない。

あくまで成績に響かないように上手くやっているつもりだ。