夢幻 (ページ10)

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末澤side

ﾋﾟﾛﾝ

佐野からの電話を切ると一気に部屋に静寂が戻る。

立ち上がって電気をつけると、すぐ目に飛び込んでくる見慣れないパンフレット。

手に取ってパラパラと捲ってみると、そこには
「症状、治療、リハビリ、経過、介護、余命」
なんて今まで自分ごとになるなんて思ってもみなかった言葉が羅列されていて、得体の知れない黒いものに覆われそうになる。

思い出されるお医者さんに言われた言葉。

あれが現実なのだとしたら俺は、そのうち...

でもやっぱり最後までアイドルの末澤誠也でいたい。
少しでも長くステージに立っていたい。踊っていたい。歌っていたい。笑顔を届けたい。

だから、俺は隠す。
バレたらきっと全てが崩れてしまうから。

さっき佐野に聞かれた時は詰まってもうたけど、次からはなんでもないように振る舞い続ける。

友達にも家族にも、メンバーにもバレへんように

隠し通そう。

今はまだ騙していたい。

みんなも、俺自身も。