◎ ページ31
その時、ふと小瀧くんと目が合う。
小瀧くんは一瞬ニコッとして、また田中ちゃんに向き合う。
−『俺のこと、もう誘わないでくださいね?』−
あの日の小瀧くんの言葉が蘇る。
「うん!いこいこ!」
少し苛立った私は、勢いに任せて、大毅の誘いに返事した。
『ほんま?ならまた連絡するわ〜』
そう言って、大毅と別れた。
小瀧くんじゃなくたって、飲みに行く人くらいいるんだから!
小瀧くんだから特別、なんてことないんだから。
そう自分に何度も言い聞かせた。
「…ふぅ、おしまい。」
定時に仕事を終わらせ、帰る準備をする。
すると後ろから、声をかけられた。
『…夢子先輩』
「…小瀧くん」
久しぶりに小瀧くんに話しかけられて、思わずドキッとしてしまう。
『今日、昼に一緒にいた人って誰ですか』
「あー、大毅のこと?同期よ。」
『…飲みに行くんすか、その人と。』
「や、やだ、聞いてたの?」
『あの人、夢子先輩のこと狙ってますよ絶対。』
「な、なに言ってるの。大毅はただの同期よ?」
『…危ない気がします。あの人。』
「もー、いい加減に…」
「のぞむー!」
「いい加減にして」と言いかけると、小瀧くんの後ろから、田中ちゃんが呼んだ。
「ねー、望!みんなで飲みに行くから望も行くでしょ?」
そう言って、田中ちゃんは小瀧くんの腕に手を回す。
『ちょ、田中、行かへんって…』
「…なんだ、そっちも楽しそうにやってるじゃない。」
「…小瀧くんに心配される必要も、理由もないわ。」
「お疲れ様。」
そう言って私は、カバンを持って勢いよくオフィスを出た。
『ちょっ、夢子せんぱ、』
「ほーら、望!みんなに置いてかれちゃったじゃーん!」
小瀧くんが引き止めようとしてたけど、
田中ちゃんと仲よさそうなところを見たら
胸がモヤモヤして、涙が出そうで…
咄嗟に小瀧くんを突き放すような言葉を言ってしまった。
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作者名:mom | 作成日時:2018年7月23日 2時