だいすき。 (ページ14)

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その日は、みっくん先輩と大河内さんを意識しつつも、

引き継ぎ等があってバタバタしていた。

藤ヶ谷先輩は、みっくん先輩と同じくらい仕事ができて

身長が高くて、時々甘い香りがする。

今日挨拶に行った取引先の事務の方も、

藤ヶ谷先輩を見るなり、目がハートになっていた。

いつもはみっくん先輩との二人っきりの営業車だが

今日からは藤ヶ谷先輩。

『次の挨拶先はどこだっけ？』

「あ、えっと、○○商事さんです！」

『OK、ありがと』

藤ヶ谷先輩は、すごく優しい。

でも、身長も少し小さくて、目線の高さはきもーち上になるくらいで

口悪くて、甘い香りじゃなくて柔軟剤の匂い。

そんなみっくん先輩の隣にいたかった。仕事だとしても。

やっぱりすごく寂しくて、また泣きそうになっていた。

『あ、ねえねえ、山田さん、あそこのコンビニ少し寄っていいかな』

「はいっ大丈夫です！」

コンビニに車を停めると、

『ちょっと飲み物買ってくるから、少し待ってて？』

そう言って、藤ヶ谷先輩は車を出て行った。

でも私の頭の中は、みっくん先輩のことでいっぱいだった。

今頃こうやって、大河内さんと二人っきりでいるんだろうな～。

「…あんな風に怒らなかったら、話しかけれるのになぁ…」

私は昨日の自分の行動により、

みっくん先輩と話しづらくさせてしまったことにすごく後悔していた。

じゃなきゃ、いつも通り話しかけれるのに。

今はただ大河内さんと楽しく話すのを見ることしかできない。

昨日のみっくん先輩の言葉を思い出す。

〝俺はうるさい奴から離れられてやっっっとのんびり仕事できて一安心。〟

大河内さんみたいに無駄がなくて、

いるだけで可愛い、おしとやかな子になって

一安心してるのかな。

「…」

だめだ。自分で考えて、自分で泣きそうになってる。

ぺちっ

「仕事だ！切り替えろ山田！」

両頬をぺちぺち叩いて切り替える。

泣くのはお家に帰ってから！

『山田さん、何してんの？』

笑いながら藤ヶ谷先輩が戻ってくる。