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息も絶え絶えの魔女は、か細い声で呪文を唱えました。
すると、温かな光が魔女を包み、次に見た時には魔女は元気になっていました。
焦げたローブも綺麗になり、水浸しだった体もすっかり乾いていました。
魔女は呪文1つで傷を治すことが出来る。
だから、死なないと云われてきていたのです。
しかし、魔女ではないヘンゼルは酷い火傷を負っており、
炎の煙で上手く呼吸が出来ていませんでした。
魔女は他人の怪我を治すことが出来ません。
やり方が分からないのです。
「魔女は逃げて。僕を置いて行って」
賢いヘンゼルは自分の状況を理解していました。
魔女は、涙を流しました。
「ヘンゼルの願い事を1つ叶えてあげる。ヘンゼルの想いと言葉があればどんな願い事だって叶うんだよ。
それが魔法さ」
声を必死に聞き取ったヘンゼルは魔女の手を握りました。
「僕は、魔女とずっと友達でいたい。それだけでいい。僕の友達は魔女だけ、魔女の友達は僕だけ。
僕だけの魔女になって」
それが、ヘンゼルのお願いでした。
魔女に友達がいないように、ヘンゼルにも友達がいませんでした。
賢いヘンゼルは同年代の子たちから一線引かれていました。
人見知りも相まって、自分から話しかける事が出来ませんでした。
話しかけてきてくれた子にも、素っ気なく返してしまい、
たった一度のチャンスをこれまで何度も逃してきていたのです。
それに、グレーテルのわがままぶりの風評被害も受けていました。
ヘンゼルにとっても、魔女が初めての友達だったのです。
「本で読んだんだ、魔女は死なないって。僕、必ず戻ってくるから。魔女のこと忘れないから。
だから、待ってて」
ヘンゼルの願いは、魔女にとって嬉しいものでした。
目に涙を浮かべながら頷いた魔女の姿を最後に、
ヘンゼルは目を閉じました。
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「来世でも、友達になってね」
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それが、ヘンゼルの最後の言葉でした。
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作者名:アイノア・リカ | 作成日時:2022年1月16日 12時