将来の夢はヴィラン! ページ2
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「よし!あの人の鞄をすれ違い様に奪うんだ」
「はい!」
「奪ったら全力ダッシュね?」
「はい!」
「パーカーのフードは外さないように!
顔見られちゃダメだから」
「はい!」
ここは、【おとぎの国】
俺たちのご先祖様が作った国だ。
この国はとても平和で何百年と争い事は起きていない。
しかし、ご先祖様がいた時代で活躍した“英雄”と“悪役”の話は書籍になるほど語り継がれており今も尚、悪役に対して多少の差別文化が残っている。
そんな国。
「うーん、でも何で赤いパーカー着て来ちゃうかねぇ。
目立つし、お前のトレードマークみたいなもんじゃん。
赤ずきんちゃん?」
片手に持った杖をくるくる回しながら言ったのは魔法使いの伊野尾ちゃん。
彼は【ヘンゼルとグレーテル】に出てくる魔女の末裔だ。
彼はお菓子が大好きで、今も杖を一振りして小さなクッキーを量産しながら食べている。
魔法が使える人が少なくなっている今、
これはお菓子好きの彼にしか使えない魔法らしい。
そして俺の名前は涼介。
数十年前に発刊された【赤ずきん】という書籍に出てくる主人公の女の子の末裔だ。
話によると、赤ずきんは狼に丸呑みされたおばあちゃんを助けたらしい。
実際、助けたのはたまたま居合わせた狩猟だったらしいが。
…これは本の中には書いていないがその後赤ずきんは狩猟と結婚して何代にも渡って家系を築き、そんで俺が生まれたってわけ!
今の説明で分かったことがあるでしょ?
伊野尾ちゃんは“悪役側”で、俺は“英雄側”。
差別文化があるこの時代で何で一緒にいるかって?
それはね、俺は最高のヴィランになりたいからなんだ!
うちに代々伝わる家訓は『親の言いつけは絶対』だ。
なんでも、赤ずきんは親に「寄り道せずにおばあちゃんの家に行きなさい」って言われていたのにも関わらず、道草を食ってしまいその間におばあちゃんが狼に食べられる羽目になったみたい。
おばあちゃんを助けた後は自分の行いを酷く反省し、
いい子になろうと決心したんだとか。
【赤ずきん】は大人気の英雄ってわけでは無いが、
王国内で「”良い人“といえば”赤ずきん“」という認識が根付いてしまっている。
だから赤ずきん家系の俺はいつも「良い人」っていうフィルターが掛かっている状態で見られていて、もうウンザリ!
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作者名:アイノア・リカ | 作成日時:2022年1月16日 12時