シアトリカルな彼女 2【H×H】

4章9話　不本意、能天気 ページ33

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　こんなに身軽な戦闘は始めてだった。

　今ならベリーアー組の全滅だって、現実的に狙える。

　しかし、今ここでベリーアーの本邸を狙って全滅させたところで、外に出ている幹部や構成員、別拠点のメンバー達が再び父と母と手を組み、再興してしまうだろう。

　そうなると今回の件にもより厳重な対策が置かれ、目的達成の難易度が上がってしまう。

　それに、世界規模のマフィアがひとつ潰れたとなれば、裏社会の混乱と世界的な治安の悪化も免れない。

　そうなるのは少し不本意だ。

　父と母のみに勝ってカンキンするという手もあるが、さすがにそういう趣味は無いので普通に嫌だし。

　これが姉ならやったかもしれないが。


(危ないわ、気持ちが昂りすぎて、うっかり全員殺しちゃうところだったもの)


　と、そこで、バタバタと上から何人もの足音が聞こえる。

　地下牢入口に目を向けてみると、一般的なメイドの衣装を身にまとった女たちが居た。

　彼女らは、ベリーアー家で使用人を務めているエリート集団だ。


｢Aお嬢様っっ！！！！！｣

｢大変お久しぶりにございます！！｣


｢ますます色っぽくなられて！！！！｣


　今から囲いこもうとしている人物に向けての第一声がコレなのは、相変わらずの能天気集団でもある証だと私は思う。

　普通もっとこう、気まずくなったりとか、6年ぶりに会ったのだから感動したりとか、そういうのがあってもいいはずなのだが。


｢貴女たちは相変わらずみたいね。少し老けた？｣


　太腿に巻き付けていた、大量のナイフに手を伸ばす。


｢私の邪魔をするなら全員倒すけど……悪く思わないで頂戴ね｣


　この雰囲気は少し懐かしかった。


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