その207 ページ7
「それなら良かった。じゃあ始めようか」
私がスタートの声がけをした数秒後、冷気が襲ってきた。
轟少年、初手はやはり右側か。
「そろそろ彼がこちらに来る頃だね」
「そうですね、私が…」
彼女が話をやめて攻撃を始めたのと扉が開いたのは、ほぼ同時だった。
星花少女の反応速度も、それに即対応できた轟少年もさすがとしか言いようがない。
しかし2人の試合展開を見ていて気が付いてしまった事がある。
それは彼は氷しか放っていないという事だ。
以前は彼女には炎氷どちらも使っていたのに、今ではかつて級友にしていた様に氷しか使っていない。
それで条件を満たして決着をつけられる程、星花少女と轟少年に実力差は無い。
このまま膠着状態が続く様なら私がアシストに入ろうか…と考えていたら
「…そっちの個性も好きになったの？」
「…は？」
「私のワガママで約束したこと…覚えてない？」
彼女がそう言った時、轟少年の瞳が大きく揺れた。
2人にしか分からない何かがあるのだろう。
うん、私の出る幕はなさそうだな。
結局、一瞬炎を出しかけたが躊躇していたので、その隙に私が一撃入れしょーととの対戦が終了した。
次の透ちゃんとの対戦(さっきと違って今度は大人しくしていれば良いだけだが…)のために、場所を移動しないと。
でも、しょーととちゃんと話したいな。
彼がモニタールームに戻ろうとしているので、声をかけて呼びとめた。
「しょーと！手紙読んだよ」
「あぁ」
「伝えてくれてありがとう。
今日一緒に帰れる？私も伝えたい事があるんだ」
「…分かった」
俺は何を言われるんだろう。
もしもう関わりたくないとか言われても、ちゃんと受け止めねぇとな…
彼女の後ろ姿を見ながらそんな事を考え、モニタールームへと向かった。
授業終了後。
「切島くん、かつきくん、お疲れ〜」
「ンだよ」
「おう！お疲れ！星花、怪我治って良かったな！」
「ありがと〜。でも怪我治すより、ここ1週間の詰め込み授業の方が辛かった…」
「フッ、ダッセェ」
「俺は分かるぜ、お前の気持ち。テストなんてなきゃ良いのにな」
「てかさAちゃんも勉強苦手なのな」
「それな、なんか意外だわ。実技とか見てると頭脳派だしさ」
「ありがと！褒め言葉として受け取っておくよって、電気くんに瀬呂くんも会うの久しぶりだね〜」
「確かにな」
「いや〜戻ってきてくれて良かったよ、Aちゃんがいない時の轟…」
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作者名：秋葉 | 作成日時：2020年11月30日 21時
