その218 ページ18
一通り説明を聞き終えた星花は試験会場に向かった。
「まだ高1なのにああ考えられるのか…」
「孫が褒められるのを聞くのは気分が良いねぇ」
「褒めたっていうより…いや、何でもないです」
「あんたが言いたい事も分かるさね。
彼女が現場経験皆無な事とその思考回路が一致しないって事だろ？
ところで彼女の母親の家系について知ってるかい？」
「星花の母方のですか？
確か政治家家系だったと記憶してますが…」
「総理大臣のような表の目立つ要職についてこそはいないものの、要所要所の大事な役割を担っている家系なのさ。
故にそれをよく思わない人達から狙われやすい。
だから、代々あの一家はその手の教育を受け対処法を身につけているらしいのさ」
「校長先生の言う通りさね。
それに"武器創造"は使い方次第で良くも悪くもなるからね。
だから、ヒーロー云々以前に彼女は強くならないといけなかったのさ、先代達以上に」
あぁ成程、だからか。
以前星花は英才教育を受けていたと聞いた時に抱いた違和感。
いくら彼女の家が裕福でも、ヒーローが身内にいても個性が出てすぐそれを扱う訓練をさせるだろうかと。
リカバリーガールもinfectionも彼女自身でさえ、どうしてもヒーローに！という気持ちが見えなかったから余計そう感じたんだろう。
だが、それは今解消された。
強くならないと、自分も周りも危険な目に遭うかもしれない。
だから強くなるのは彼女の責務なんだと。
そんな重荷を年端もいかない頃から背負っているのか。
しかもその重責に押しつぶされる事なくなんて…あいつのタフさは相当だな。
「僕もそろそろ持ち場に移動するかな」
「…そうですね、俺も移動します」
「2人とも大怪我をしないよう、させないよう、気をつけてお行き」
先生2人を見送り、モニタールームのドアの鍵を解除する。
数人の生徒が入ってきた。
生徒達の会話を聞きながら、第一試験の会場カメラと同期させる。
因みに今回は生徒視点と教師視点の3台のみ。
Aちゃんの課題"気づかれずに"には、勿論このカメラに映らない事も含まれている。
3台だけとは言え、絶えず動くそれらの死角に入るのは容易ではない。
だが彼女なら出来るだろう。
教師としての立場上、表立って1人の生徒を応援する事は出来ないが…Aちゃん、頑張れ！
そう心の中で応援しながら、開始を告げるアナウンスを流した。
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作者名：秋葉 | 作成日時：2020年11月30日 21時
