電話 ページ27
ころんは携帯の電源を切り、動画の編集をしていた。
しかし、手につくはずもなく、飼っている犬と遊んだり、ゴロゴロしたりしていた。
「やっぱ、別れた方がいいのかな」
付き合う前は何があっても守る、と言ったが、実際に炎上を目の当たりにすると、守るために別れた方がいいのか、という考えに至ってしまう。
ネットは怖い。
ころんは頑張って頑張って隠してきて、個人情報が守られてきた。
だが、一般人のAには難しい。
すぐに特定され、ネットの海に晒されるだろう。
しかも、Aは接客業、多くの人に見られる職業だ。
Aの私生活に支障をきたしてしまうのは、本望ではない。
「たぴちゃん……僕には、Aを守れないのかな……」
飼っている犬とじゃれあいながら、ころんは言う。
くぅん…と悲しげな声で鳴いた。
ころんは現実を見ようと、携帯の電源を入れる。
すると、ちょうど数分前にAから通知が来ていた。
るぅとから炎上の話を聞いたのだろう。
【A】
ころちゃん、電話できる?
ころんは泣くのを堪えて、
【ころん】
今できる。僕も電話しようと思ってた。
とだけ送ると、すぐにAから着信があった。
「ころちゃん、もしもし?」
一日ぶりの愛しい声に、ころんは不安だった気持ちが急に落ち着いた。
「Aちゃん……ごめん。るぅとくんから、聞いたよね?」
「……うん」
「言い訳はしない。僕から直接言うべきだった。不安にさせたよね。ごめんなさい」
「大丈夫。今会話出来ているだけで、安心してるから。ねぇ、ころ−−」
「ごめん、僕から話させてほしい」
「分かった。なに?」
ころんは、すぅと一息吸うと、Aに話し出した。
「僕ね、Aと付き合えて嬉しい。まだ全然時間は経ってないけど、一緒にいる時間はとてもかけがえ無くて、愛しい時間だよ。これからも、そんな時間を2人で紡いでいきたい。だけど…今回のことがあって、考えたんだけど……いろいろ、考えたんだけど……ネットって怖いから。ごめん……僕一人では、Aを守れないかもしれない……」
言葉の端々で、鼻をすする声を聞いて、Aも自然と涙が出てくる。
Aは今まで、ネットと深く関わって来なかった。
だからか、ネットの怖さ、というものは学校の授業でしか知ることができなかった。
だから、ころんの判断を信じてついて行くと決めていた。
「でもね、でも……やっぱ別れたくないよぉ……」
電話の向こうで、ころんは声を出して泣いた。
57人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ふゆちゃん - ゆきをさん» すごいよい話!更新待ってます! (2020年9月26日 22時) (レス) id: f0e4261de2 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきを(プロフ) - 小さい惑星さん» ありがとうございます!!励みになります!! (2020年9月6日 16時) (レス) id: 7a4c1d9b3e (このIDを非表示/違反報告)
小さい惑星 - すごくワクワクするお話ですね!応援してます〜 (2020年8月31日 15時) (レス) id: 17fc4ab8f5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきを(プロフ) - みかささん» みさかさん ありがとうございます!励みになります。完結までもう少し (2020年8月28日 13時) (レス) id: 7a4c1d9b3e (このIDを非表示/違反報告)
みかさ(プロフ) - すごく面白いです! (2020年7月24日 22時) (レス) id: d74848b20e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ゆきを | 作成日時:2020年2月12日 11時