Paranoia【短編集】２

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『……なんなのよあの佐々木って人…！私がウザかってるの分かんないの？下心見え過ぎててマジきもいんだよ！』




トイレに駆け込んですぐ、洗面台に両手をつきながら鏡に映っている自分に佐々木さんへの愚痴をぶちまける。


もちろん誰もいない事は確認済みだ。

まぁ誰かいたところで、これから先その人に出会う事なんてまずないだろうから関係ないのだが。




…もう帰ろうかな。




佐々木さんの誘いを断る為に明日５時起きだなんてありきたりな理由を言ったが、実はその口実は本当で私は明日５時には起きて会社に行かなければならない。

理由は簡単。今日の残業をこの合コンの為に放ってきたので朝のうちに仕上げなければ部長に怒られてしまうのだ。


それも含め、本当に来るんじゃなかった……と後悔でいっぱいである。









『あー、もうだるいなー』


「………ふっ…(笑)」

『…えっ？』




あと30分くらいしたら本気で帰ろう！と心に決め、一発軽く自分の頬をパチンと叩いてからトイレを出る。

すると女用トイレの向かい側にある男用トイレの扉の前に今回の合コンに参加している男の人が立っていて、私がだるいなーと言っていたのが聞こえたのだろうか口に手を当てて肩を震わせながら笑っていた。


確かこの人は岩田さんとかいう人で、男性陣４人の中でずば抜けてかっこいい人だ。




『…なんですか』

岩「ん？なにが？笑」

『なにがって……、さっきからずっと笑ってるから』


岩「あぁ、ごめんごめん(笑)トイレで佐々木さんの愚痴を言ってたのが丸聞こえでさ、Aちゃんっておもしろい子なんだなーと思って」

『…そうですか』




最悪だ…、まさかトイレの外にまで聞こえていたなんて予想外だし、よりによって佐々木さんの後輩の人に聞かれてたなんてありえない。

やばい、これは非常にやばいぞ。




『…あ、あの……、今言ってた佐々木さんっていうのは私の上司の人で…、決してあの佐々木さんでは…』

岩「いやいや、そんな必死に誤魔化さなくても(笑)佐々木さんにチクったりしないから安心して。それに俺もあの人苦手な方だから」


『…そうですか。じゃあ……』




不気味な笑顔を見せるこの人がどうも苦手だ！と思ってしまった私は、先に戻りますね…と軽く頭を下げながら足を前に出した。

するとその時……、




ドンッ!!!




と、大きな音が私の目の前で鳴り響いた。

なんだこれ………？

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