Paranoia【短編集】２

▽ ページ24

.




『……大樹くんは、ウーパールーパーなんとかの生態について詳しいのかね？』

大「だから“なんとか”は不要ですって」




未だ悪ふざけでウーパールーパーの話をしているAに、またまた真顔の大樹が冷たい言葉をスパッと浴びせる。

彼には冗談というものが通じないのだろうか。




『……そういえば、君…』

大「はい？」


『……いや、気のせいだったらべつに良いんだけどね？君は私が聞いたウーパールーパーなんとかっていう生き物になんとなく似ている気がするよ』


大「……は…？」




確かに大樹は実家にいる頃からウーパールーパーを飼育しているし、ファンの中には佐藤大樹といえばウーパールーパーだという印象を持っている、もしくは彼とウーパールーパーが似ていると思っている人もいるだろう。


だが、あんなに薄い顔をしている生物と顔が似ているというのはあまり喜べないものである。

現に大樹の今の顔は、眉が下がって口角の右側だけが上がっているという複雑なものだ。




『ねぇメンディー、似てると思わない？』

メ「え、俺はその生き物の話を直接聞いたわけではないのでなんとも…」


『あぁそうか』




とは言ったものの、本当は顔も生態も知っているメンディーからすれば大樹とそれが似ているというのも若干理解できるらしい。

大樹の顔を見て今にも吹き出しそうになっているのを、口を押えて必死に堪えている。




『……うん、やっぱり君はウーパールーパーなんとかに似てるよ！ていうか君自体がそれなんじゃいの？』

大「はぃ！？」

『…いやきっとそうだ。だからちょっと君の体を調べさせてくれない？』


大「えぇ！？ちょ、体を調べるってなんすか！」

メ「大丈夫だよー。ちょっと裸になるだけだから」

大「なにが大丈夫なんすか！Aさんの前で裸になるなんて１秒でも嫌ですよッ！」


『君に拒否権なんてものはない。君はおとなしく我々のアトリエについてきて頭のてっぺんから足のつま先までたっぷりと調べさせてくれれば良いんだ』



大「……………………。」





Aのビックリ仰天な発言に、大樹は驚き過ぎて声すらも出なくなったのであった。

▽→←▽

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す