Paranoia【短編集】２

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“ちょっとA、あんた今日涼太をフッちゃったんだって！？”




涼太と煌世の浮気現場を見てしまったその日の夜 突然煌世から電話がかかってきて、それに出た途端彼女の口からはそんな言葉が放たれた。

その声の大きさはもう半端ないもので、私は“もしもし”という言葉を遮られた上に耳の奥がキーンとなってしまった事に少しイラッとしている。


涼太をフッたのはあなたのせいでもありますよ？と言いたい気分だし、今どんなテンションで話せば良いのか分からないから困ったもんだ。




『……ははっ…、フッちゃった』

“だからなんでよ！なんであんな完璧な彼氏をフッちゃうわけ！？”


『……さぁ…』




だから、あなたのせいだってば。




『ていうか、なんで煌世は私が涼太をフッた事知ってんの？』

“え？あぁ、いやそれは……。あれだよあれ！なんか俺フラれたんだけどーって涼太から電話かかってきてさ！”

『…ふーん』


“ふーんって…。てかそんな事はどうでも良いんだよ！一方的に別れようとだけ言われても納得できないって涼太が嘆いてたよ？なんかちゃんとした理由があるなら一度話し合った方が…”


『もういいの。涼太だって今日の私との約束を理由も言わずに断ったんだから』

“ちょ、なによそれ…。意味分かんないんだけど”

『べつに分かってもらわなくて良いし』




なぜ私がキレられているのだ…？

そんな理由でフるとかマジで意味不明。涼太がかわいそうじゃん？と普段よりも少し低めの声で言っている煌世は電話越しでも分かってしまうほど苛ついていて、私は怒られる筋合いないっつーの…と心の中で呟く。


一番かわいそうなのは私でしょ。




『…涼太がかわいそうってなに？じゃあ私はどうなるのよ。半年の記念日なのにデートを断られて、その上煌世にも嘘つかれて…、私はどうしたら良かったのよ！？』

“えっ…、Aもしかして…”

『…見た、涼太と煌世が楽しそうに歩いてるところ。だから私は電話したんだよ、どこでなにしてるの？って』


“……うわー、マジか。見られちゃったか(笑)”




え、煌世のやつなんで笑ってんの？

まさか謝りもせず開き直るつもりじゃないでしょうね？




“……あのさ、A”

『…なに』

“…私は確かに今日涼太と一緒にいた。でもAが思ってるような関係じゃないよ？”


『………知らないし、そんなの…』




そんな言葉、信じられるわけがない。

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