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「何してんだ。」
暗闇から漂う煙、威圧感。
「ゔ、ぅっ、うわぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛」
あの巨漢の悲鳴が聞こえると、彼女は身体の自由を手にした。
彼女は焦っていた。
今から自分も、あの巨漢と一緒で殺されてしまうのではないのかと。緊迫感や焦燥感が、彼女の頬を伝った。
そして暗闇から煙の正体が見えた。
なんと表現すればいいのやら、それは確実に人ではなく、端正な顔立ちを持つ、蜘蛛の妖の類であった。
『あっ、あっ、ありがとう、ございます。』
「礼はいい、さっさと股間のしゃぶり方もわかんねぇ餓鬼は、家へ帰れ。」
彼女もそうしたいと思っていた。
血まみれになった巨漢を見て、腰を抜かしてしまい、思うように身体が動かないのだ。
『あの、すみま、せん…』
「なんだ、俺が殺したくなる気分になる前に、帰りな。」
『帰りたいんですけど、腰を抜かしてしまって…思うように立てなくて。』
ふっと腰が軽くなり、私の背と膝に手が回されていた。
『えっ、』
彼女は目を瞑った瞬間に、ビルの屋上まで来ていた。
「おい、お前の家はどこだ。」
『えっと、この道を真っ直ぐ行って、あのバルコニーのある屋敷です。』
「分かった。」
彼は軽々とビルとビルの間の暗闇をかけて行った。
彼女は驚きと初めての体験で、暗闇の中の壁の顔がこの世界で1番眩しくみえた。
彼女は彼の翡翠の双眼に吸い込まれ、段々と頬を染めていた。
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作者名:lei | 作成日時:2024年2月6日 23時