おかしな関係 ページ10
Aside
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蝉の声に、いつのまにかツクツクボウシが混じっていた。
『夏も終わりますかね』
「ですねィ」
今年の夏は今までで一番早く過ぎ去りようとしていて。
いつの間にか八月も下旬に入っている。そしてほぼ毎日、沖田さんと一緒にいる時間が存在していた。
「あ、Aさん。土曜日、夏祭りの見廻りがあるんで夕飯いりやせん」
『夏祭りなんてあるんですか』
真選組は意外と庶民的な仕事もこなしている。今まで、ばっさばっさ犯罪者を捕まえているイメージがあったけど、パトロールだったり書類仕事だったり、お巡りさんの職務も行っているそうだ。
「毎年この時期にやってて、その度に見廻りに駆り出されて。めんどくせ」
沖田さんはブラックコーヒーを啜る。
先月の甘味処の件でも分かったが、沖田さんはかなりの面倒くさがりだ。最近になってようやく話せるようになった土方さんによると《半端ないサボり魔》らしい。
『ご苦労さまです。夏祭りかぁ、行ったことないな』
え、そうなの?と顔を上げる沖田さん。私は慌てて、行った回数が少ないだけですと取り繕う。うっかり口が滑った。十八歳でお祭りに行ったことがないなんて結構レアだろう。
「じゃあ、楽しめるといいですねィ、夏祭り」
唇を綺麗な弧のかたちにする沖田さん。
また少しどぎまぎしてしまう。私の変な調子はどんどん増していっていた。
『は、はい。…ごちそうさまでした』
「ごちそうさまでした」
目が合わせられなくなって、私は立ち上がる。本当に変なのだ。前みたいに沖田さんに接することが出来ず。
無意味にひとり緊張する日々が続いて。
『なんなんだろう…』
洗い物をしながら考える。
作戦の時からちょっとドキドキはしてたけど、決定的だったのは沖田さんの誕生日の夜で。あの《ありがとう》に、胸の奥が突かれてしまった気がするのだ。思い出してまたくすぐったい気分になる。落ち着け落ち着け。
そうだ、ちょっと誰かに聞こう。お妙さんとか、親身に相談に乗ってくれそうだし。沖田さんとの契約のことはオブラートに包みつつ、この何とも言えない緊張感とドキドキの意味を尋ねてみればいい。ついでに夏祭りにも誘ってみようかな。
『そうしよう』
「何が?」
気づいたら沖田さんが真後ろにいた。
いつかのように悲鳴をあげてしまう。
『驚かせないで下さいよ…』
「ははっ。じゃ、行ってきやす」
『いってらっしゃい』
屯所に行く沖田さんを見送って、私はふうとため息をついた。
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みるくれーぷあいす(プロフ) - 麗桜さん» ありがとうございます。 (2019年10月25日 23時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
麗桜 - と〜っても面白いです!更新頑張ってください! (2019年10月25日 19時) (レス) id: a174017b38 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - 麗桜さん» ありがとうございます!嬉しい限りです。マイペースな更新ですが、これからもよろしくお願いします! (2019年10月19日 18時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
麗桜 - とっても面白いです!無理矢理原作に沿っていなくて,とても読みやすいです!更新頑張ってください! (2019年10月19日 16時) (レス) id: a174017b38 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ykoma1218/
作成日時:2019年8月25日 22時