プレゼントの関係 ページ9
Aside
·
沖田さんは、開けていいですかィ?と尋ねてきた。私は頷く。何とか沖田さんの趣味にひっかかりますように。
「イヤホンだ」
沖田さんはケースに入った黒いイヤホンを取り出す。
落語のCD、は分からないけど、それを聞くグッズならいいかもしれないと思い購入した。一応ノイズキャンセリング機能みたいなものもついている。ちなみに、買う時にどの種類にすればいいかわからなくて電器屋さんで四十分うろうろしてしまった。
「ちょうど使ってたのが壊れてて。助かりやした、大事に使いまさァ」
『よかった、ありがとうございます』
ジャストセレクトだったみたいだ。ほっ。
沖田さんはまだ袋に残っているものがあることに気づき、手を伸ばす。
「…おおお」
濃紺の布地のブックカバーと、青空にひこうき雲が走るイラストのフィルムしおり。前沖田さんの本棚にあった文庫本のサイズに合わせた。
「使いやすそう。ほんと、ありがとうごぜぇやす」
ふと、懐かしいものを見るような目で沖田さんがブックカバーを見る。やっぱり、あの本は大事なものだったんだな。大人びた微笑みを浮かべる沖田さんに、思わずちょっとドキッとしてしまう。イチャイチャした時とは別の、なんだか刺さるような。
『いえいえ。そう思ってくれて嬉しいです』
誤魔化すように返事をして立ち上がる。キッチンの冷蔵庫からケーキの箱を取りだした。
『ふた切れだけですけど、ケーキも買ってみました!チーズケーキとチョコケーキ、どっちがいいですか?』
「マジですかィ、やった。じゃ、チョコケーキで」
小皿に盛り付けてフォークと一緒に渡す。飲み物は、と聞くとカフェオレと返ってきた。本当にブラックは朝しか飲んでいないようだ。
自分の分もよそって、テーブルに戻る。
『ではもう一回』
コップを掲げて、音を鳴らす。
『かんぱーい』
「かんぱーい」
笑い合う私と沖田さん。
『おめでとうございます』
「…ありがとう」
思わずケーキを切ろうとしていた手が止まった。
初めて聞いた柔らかい口調。きっと近藤さんとかにしか見せていなかったような部分。そして、満面の笑み。
なんか、なんか。
ぎゅっと胸が掴まれたような気分に、なる。
うわあ、本当に変だ。
ケーキを咀嚼する沖田さんは、いつもの飄々とした表情に戻っていて。まだ心臓を踊らせた状態のまま、私もケーキを口にする。
__チーズケーキはいつもより少し、味が濃かった気がした。
106人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みるくれーぷあいす(プロフ) - 麗桜さん» ありがとうございます。 (2019年10月25日 23時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
麗桜 - と〜っても面白いです!更新頑張ってください! (2019年10月25日 19時) (レス) id: a174017b38 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - 麗桜さん» ありがとうございます!嬉しい限りです。マイペースな更新ですが、これからもよろしくお願いします! (2019年10月19日 18時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
麗桜 - とっても面白いです!無理矢理原作に沿っていなくて,とても読みやすいです!更新頑張ってください! (2019年10月19日 16時) (レス) id: a174017b38 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:みるくれーぷあいす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ykoma1218/
作成日時:2019年8月25日 22時