到着の関係 ページ38
Aside
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隣の沖田さんは、アイマスクをしたまま動かない。私は窓側に身を寄せる。一旦落ち着こう落ち着こう。
…全然落ち着かない。景色を見ても流れていくだけだ…。
ひたすら景色の中の電柱を数えることに専念するものの、沖田さんが少し身じろきする度に隣を見やってしまう。
これが、恋。
相手のことが気になって、無性にドキドキしてしまう──最近読み始めた少女漫画ではよくある展開、なんだけど。実際に自分がその立場になったら、心臓が潰れそうだ。漫画のヒロインのように「〇〇くん…!」だなんて行動、とても起こせない。
《Aさんは、両想いになりなくないんですか》
今朝も思い出した立花さんの一言。
両想いなんて、考えられない。
でも、でも。少しは、沖田さんに、近づきた…いとか、ちょっとは考えるけど無理だろう。第一、沖田さんは本当に何考えてるかわからない。ああ、と私は静かに、隣の沖田さんにバレないよう、息を吐いた。
《まもなく、京都駅に到着します》
気づけば新幹線の振動がゆっくりに変わっていて、窓の外の景色が都会になっていた。さっきまで緑だったのに、と驚く。京都、割と山に近いのだろうか。
『沖田さん、起きてください、着きますよ』
沖田さんにそっと声をかける。揺さぶった方がいいのかな、なんてことを思いついた途端、沖田さんはのそりと腕を動かしてアイマスクを外した。
「そーですかィ。すいやせん、寝てて」
『いえ、大丈夫ですよ。少し休めました?』
「ま…まぁ」
言葉の割には、なんだか朝より疲れているように見える沖田さん。悪夢でも見ていたのだろうか。
二人でシートから立ち上がり、荷物を持ってドアの近くまで移動する。新幹線はどんどん減速し、やがて大きな駅に入り、止まった。
開いた扉から、駅に降り立つ。
京都、到着。
プラットホームは人で溢れていて、大江戸駅と同じだ。でも、圧倒的に外国の人が多い。江戸では天人がたくさんいて、外国人は珍しかったけど、京都では逆なのかもしれない。
「最初に荷物預けるんでしたっけ」
『あ、はい』
私たちが宿泊するホテル──というより、近藤さんが引き当てた旅行のホテルは、京都駅に直結している。チェックイン前に荷物を預けて観光してしまおうという計画だった。
看板やらなんやらを参考に、駅の中を歩き回る。曲がったり上がったり、迷路みたいだ。
『ここかな…?』
「ここですかね?」
やがてホテルへの入口をみつけ、私達は扉を開けた。
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みるくれーぷあいす(プロフ) - 麗桜さん» ありがとうございます。 (2019年10月25日 23時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
麗桜 - と〜っても面白いです!更新頑張ってください! (2019年10月25日 19時) (レス) id: a174017b38 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - 麗桜さん» ありがとうございます!嬉しい限りです。マイペースな更新ですが、これからもよろしくお願いします! (2019年10月19日 18時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
麗桜 - とっても面白いです!無理矢理原作に沿っていなくて,とても読みやすいです!更新頑張ってください! (2019年10月19日 16時) (レス) id: a174017b38 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ykoma1218/
作成日時:2019年8月25日 22時