ネ オ ン 5 ページ20
Aside
·
そこまでしてくれなくても、よかったのに。
せっかくだから、私はバイト先から家まで送って貰っている最中だ。
私の家とバイト先のあるショッピングモールまでは徒歩十五分。桂さんの横を歩きながら、こうなるとは昨日の私は想像すらしてなかっただろうなあ、とのんびり考える。
「そういえば、猿飛が会いたがってたぞ」
『ああ、猿飛さん…、ん?桂さん、お知り合いなんですか』
「クラスメイトだ」
衝撃の事実。
私は『ええっ』と声を上げてしまう。
「そこまで驚くことか」
『いや…』
確かにそうなんだけど。意外な繋がりがあって驚きなのだ。しかも、私のことが話題に昇っていたとは。
桂さんはゆっくりと私の隣で歩を進めていく。
いつもよりあたりは暗い。コンビニの看板やビルから漏れる光がさらに明るく見えた。
交差点にさしかかり、右に曲がる。
ちらり、と桂さんを見やった。
やっぱり、さらさらの長い黒髪に目を奪われてしまう。
「…何か気になるものでもあったか」
私があまりにも凝視していたからか、首を傾げる桂さん。
『あ、桂さんの髪の毛、綺麗だなって思って』
女子の私よりストレートな気がする彼の黒髪。
邪魔じゃないのかな、とも思うけど。
「そうか?」
桂さんは自分の髪をつまむ。
「俺は、Aの髪の方が綺麗だと思うが」
『…へ』
思わず変な声が口から零れた。
私の髪の方が綺麗?
「A」?
どこからどう考えればいいか分からなくなって、立ち止まってしまった。
「…今のはセクハラ発言にあたるのか!?」
何を勘違いしたのか、慌て始める桂さん。
『いや、すみません!そんなこと言われたの初めてだったので、その、びっくりして』
私も誤解をとこうと慌てる。
夜の中あわあわする二人の男女は、傍から見ればたいそう滑稽な様子だろう。
「よ、よかった。近頃は言葉に厳しいからな、本当に他意はないんだ」
じゃあ本意はなんなんだ、と突っ込みたい。
…今日は、桂さんの知らない面を見っぱなしだ。
『あ、ここです』
そうこうしているうちに、私の家に着いた。
私は改めて桂さんにお礼を述べる。
『本当に、ありがとうございました』
「困った時はお互い様だ」
桂さんは微笑み、おやすみ、と告げる。
ネオンをバックに笑う彼は、なんだか不思議な雰囲気に包まれているように見えて。
私も、笑った。
『おやすみなさい』
明日からのバイトを、少し楽しみにしながら。
桂さんを見送った。
__ネ オ ン 終__
44人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みるくれーぷあいす(プロフ) - 氷華さん» ありがとうございます!嬉しい限りです! (2019年12月25日 16時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
氷華 - 神威君ーーーーーーーーー! この小説いいね♪ (2019年12月25日 12時) (レス) id: e5c89771f4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:みるくれーぷあいす | 作成日時:2019年8月27日 1時