検索窓
今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:14,688 hit

2 ページ4

Aside
·

車のスピードが突然落ち始めた。
ギギギ、と明らかにおかしな音が鳴っている。
アクセルを踏み込んでみるも効果はなく、車はゆっくりと止まってしまった。

『どうしよう…』

ガス欠だろうか。車をおりて外に出てみるが、ガソリンスタンドはおろかコンビニすら見当たらない。ここ、夜霧峠は名前の通り山に近いので、建物は婚活パーティーのあったホテルしかなかった、ということを今更に思い出した。

日はすでに暮れ、車通りもない。
__しんとした冷たい空気が体をつつみ、思わず身震いした。このままでは立ち往生になってしまう。どうしよう。

その時、遠くの方から光が近づいてきているのに気づいた。黒い車だ。どうやら私に気づいてくれたようで、だんだんとスピードを緩め、私の車の斜め前で止まった。

「大丈夫か?」

低い声で車から降りてきた男性。背が高く、体つきもがっしりとしている。

『突然、車が止まってしまって。ガス欠ですかね…』

鋭い、刺すような視線。背後の車を見やる。
男の人は私の車に近づき、しゃかんだ。

「車の状態、良ければ少し見るが」

『あ、ありがとうございます』

雰囲気の割に親切な人だったらしい。男の人は「寒いし、俺の車の中で待っててくれ」と自分の車を指さした。ありがたくそうさせてもらうことにして、私は彼の車の助手席側のドアを開け、座った。
車の中に入った途端、微かにタバコの匂いがして、あまりタバコが好きじゃない私は少し顔を顰めてしまう。でも、車を見てもらっているのだ、文句は言えない。

付けっぱなしになったカーラジオからニュースが流れている。

【…○○県、夜霧峠で、女性が誘拐され殺害される事件が相次いでいます。犯人は未だに掴まっておらず、夜霧峠周辺に潜伏していると思われます】

夜霧峠って、この辺じゃないか。
そんなことを考えた時、足元で何かがきらりと光った。

『なんだろう』

目を凝らすと、女物のネックレスだと分かった。さっきの硬い雰囲気の男の人に結びつかず、私はひろいあげる。

その途端、頭に流れ込んだ記憶。


はあはあという荒い息で、女の人が必死に走っている。遅れて聞こえる、カツ、カツというかわいた靴の音。だんだんだんだん、確実に近づいてくる。

《いやっ!やめて!》

女の人は短く悲鳴をあげ、道を曲がった。
それでも執拗に音はついてきている。
誰かから、逃げている…?



「おい」

記憶に集中していた私は、低い声に思わずびくりと肩を揺らした。

3→←1



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (25 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
23人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

みるくれーぷあいす(プロフ) - ちぃなさん» ありがとうございます!これからも楽しんでいただけると嬉しいです。 (2019年10月30日 16時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
ちぃな - ホラー好きなので嬉しいです!更新楽しみにしてます。 (2019年10月29日 14時) (レス) id: 43ae00df60 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - 綾葉メグさん» ありがとうございます!マイペースな更新ですが、これからもよろしくお願いします。 (2019年10月27日 17時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
綾葉メグ(プロフ) - 面白いです!更新楽しみにしてます! (2019年10月27日 15時) (レス) id: fe3feae032 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:みるくれーぷあいす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ykoma1218/  
作成日時:2019年10月15日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。