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Aside
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車のスピードが突然落ち始めた。
ギギギ、と明らかにおかしな音が鳴っている。
アクセルを踏み込んでみるも効果はなく、車はゆっくりと止まってしまった。
『どうしよう…』
ガス欠だろうか。車をおりて外に出てみるが、ガソリンスタンドはおろかコンビニすら見当たらない。ここ、夜霧峠は名前の通り山に近いので、建物は婚活パーティーのあったホテルしかなかった、ということを今更に思い出した。
日はすでに暮れ、車通りもない。
__しんとした冷たい空気が体をつつみ、思わず身震いした。このままでは立ち往生になってしまう。どうしよう。
その時、遠くの方から光が近づいてきているのに気づいた。黒い車だ。どうやら私に気づいてくれたようで、だんだんとスピードを緩め、私の車の斜め前で止まった。
「大丈夫か?」
低い声で車から降りてきた男性。背が高く、体つきもがっしりとしている。
『突然、車が止まってしまって。ガス欠ですかね…』
鋭い、刺すような視線。背後の車を見やる。
男の人は私の車に近づき、しゃかんだ。
「車の状態、良ければ少し見るが」
『あ、ありがとうございます』
雰囲気の割に親切な人だったらしい。男の人は「寒いし、俺の車の中で待っててくれ」と自分の車を指さした。ありがたくそうさせてもらうことにして、私は彼の車の助手席側のドアを開け、座った。
車の中に入った途端、微かにタバコの匂いがして、あまりタバコが好きじゃない私は少し顔を顰めてしまう。でも、車を見てもらっているのだ、文句は言えない。
付けっぱなしになったカーラジオからニュースが流れている。
【…○○県、夜霧峠で、女性が誘拐され殺害される事件が相次いでいます。犯人は未だに掴まっておらず、夜霧峠周辺に潜伏していると思われます】
夜霧峠って、この辺じゃないか。
そんなことを考えた時、足元で何かがきらりと光った。
『なんだろう』
目を凝らすと、女物のネックレスだと分かった。さっきの硬い雰囲気の男の人に結びつかず、私はひろいあげる。
その途端、頭に流れ込んだ記憶。
はあはあという荒い息で、女の人が必死に走っている。遅れて聞こえる、カツ、カツというかわいた靴の音。だんだんだんだん、確実に近づいてくる。
《いやっ!やめて!》
女の人は短く悲鳴をあげ、道を曲がった。
それでも執拗に音はついてきている。
誰かから、逃げている…?
「おい」
記憶に集中していた私は、低い声に思わずびくりと肩を揺らした。
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みるくれーぷあいす(プロフ) - ちぃなさん» ありがとうございます!これからも楽しんでいただけると嬉しいです。 (2019年10月30日 16時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
ちぃな - ホラー好きなので嬉しいです!更新楽しみにしてます。 (2019年10月29日 14時) (レス) id: 43ae00df60 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - 綾葉メグさん» ありがとうございます!マイペースな更新ですが、これからもよろしくお願いします。 (2019年10月27日 17時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
綾葉メグ(プロフ) - 面白いです!更新楽しみにしてます! (2019年10月27日 15時) (レス) id: fe3feae032 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ykoma1218/
作成日時:2019年10月15日 1時