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土方side
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ミツバから連絡を受け。
俺は近藤さんのお通夜の帰り道を、一人歩いているところだった。
まだ信じられない。近藤さんが、この世にいないことを。
死んでしまった、ことを。
昨日、近藤さんとキャッチボールをした公園に通りかかり、足を止めた。
なんとなく、公園の入口まで進んでみる。
確実に昨日の今頃は、ここに存在していたのに。今はもう、どこにもいない。
…空っぽの公園を見ているのが嫌になり、俺は下を向く。
その時、だった。
足元に見覚えのあるボールが転がってきて、止まった。
「…このボール」
近藤さんが持っていたボールにそっくりだ。
腕を伸ばして、拾い上げる。
「トシ、何やってるんだ?こっちこっち」
…聞こえるはずのない、聞き覚えのある声。
俺をトシと呼ぶ、ただ1人の人物。
振り返ると──こちらに手を振る、近藤さんがいた。
なん、でだ?だって今日、彼のお通夜があったのに。
よろよろと、近藤さんに近づく。
近藤さんの服装は昨日と全く同じだ。自分の服も、先ほどまで着ていた黒いスーツから、昨日着ていたパーカーとデニム姿になっている。
いつのまにか、日はそれなりに傾いていて。
昨日と、同じ。
目の前には、近藤さん。
信じられない気分のまま、俺は彼にボールを投げる。
昨日やっていた、キャッチボール。
他愛ない会話。
俺は段々と理解する。
──今、俺は、昨日にいる。
時間が、遡ったのだ。
「そろそろ日もくれてきたな、帰るか」
近藤さんはそう言って伸びをする。
確か昨日、俺は「そうだな」と返し、二言三言交わして、帰ったのだ。
「…近藤さんの家の方に用事があるから、途中まで一緒に帰っていいか」
近藤さんを無事に家まで送り届ければ、近藤さんは死ぬことは無いんじゃないか。
俺はそう判断し、咄嗟に嘘をでっち上げる。
「そうなのか?じゃ、行こう」
近藤さんと連れ立って、公園をでた。
***
近藤さんが石段から転落することもなく。
無事に彼を家に送り届け、俺は自宅に戻り、自室でぼんやりと写真を見ていた。
近藤さんの死を、回避出来た。
ほっとしたというよりは、信じられない気持ちの方が強い。時間が巻きもどるなんざ、常識では考えられないし。
まあ、これでもう大丈夫だろう。
…スマートフォンから、着信音がした。
相手は、【沖田ミツバ】。
どくりと心臓が音を立てる。
《大変…っ!近藤さんが!》
ああ、聞き覚えがある、これも。
《近藤さんが、今日の夕方、亡くなったって…!》
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みるくれーぷあいす(プロフ) - ちぃなさん» ありがとうございます!これからも楽しんでいただけると嬉しいです。 (2019年10月30日 16時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
ちぃな - ホラー好きなので嬉しいです!更新楽しみにしてます。 (2019年10月29日 14時) (レス) id: 43ae00df60 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - 綾葉メグさん» ありがとうございます!マイペースな更新ですが、これからもよろしくお願いします。 (2019年10月27日 17時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
綾葉メグ(プロフ) - 面白いです!更新楽しみにしてます! (2019年10月27日 15時) (レス) id: fe3feae032 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ykoma1218/
作成日時:2019年10月15日 1時