カ ク シ 2 ページ42
土方side
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もういいかい、まあだだよ。
もういいかい、まあだだよ。
俺に《もういいよ》が聞こえることは無い。
***
総悟もこっちに気づいたようで、手を上げた。
「見せてきたらどうだ、その格好」
『…う、うん!ありがとう土方くん』
何をやっているんだ、と自分でも思う。
好きな奴の恋を応援して何になるんだとも思う。
だって、仕方がないじゃないか。俺がAといられる理由はきっとそれしかないのだから。
向こうに行ったAの背中を見る。
はああ、と自然にため息が零れた。
「総悟の好きな奴は、Aだろ!?」
深夜テンションで盛り上がった昨日の部屋。
近藤さんが総悟をつついて。
答えないでくれ、と思ったのに。
「…ん、まあ、はい」
ふおおお!やっぱりか!うえええい!
総悟の言葉に爆発的な盛り上がりを見せる部屋の男子達。俺も笑っているふりをする。
「マジかまじか、え、鈴あげんの?」
誰かの言葉に、耳を赤くした総悟。
「そのつもりでィ…って、さっきからなんだよてめーら!うぜェ!」
それが照れ隠しなのはバレバレだった。
どこで渡すの?清水寺?頷く総悟。
ははっ、いいじゃねーか。死ね土方。応援してやってんのになんだお前は。意志とは関係なく動く口。
終わってんじゃんかよ、俺。
笑って誤魔化しながら、その夜を過ごした。
『最初に行くのは伏見稲荷だね!』
立ち並ぶ鳥居で有名な伏見稲荷に行き、三十三間堂を見て、清水坂をぶらぶらして昼飯。その後清水寺で景色を楽しみ、祇園に移動して観光しつつ旅館に戻る。
清水寺に行くのは昼過ぎか。二人の初デートが祇園、これまたらオシャレだなと半ばやけくそに思う。
「鳥居がずーっと立ってんだろィ?」
『そうそう、凄いよねー!早く行きたいなあ』
2人のお互いを見つめる目線はもう恋人のそれだ。Aがその目線を俺に向けてくれないかと何度願ったことか。
「ラブラブアルな、早くくっつけヨ」
後ろでボソリとつぶやくチャイナ娘。
本当にお似合いカップルすぎて文句も出ない。
***
『うわ!ほんとにいっぱいある!絶景!』
ばさばさひらひらと袖を動かし、いそいそとスマホで写真を撮り始めるA。
確かにかなり壮観だ。鳥居が並ぶ伏見稲荷大社は写真で何度も見たことがあるが、実際に見ると迫力が全然違った。
「わー、すげ」
感動しているのかしていないのか、呟きながら鳥居の中を歩き出す総悟。
Aのスマホに、総悟の後ろ姿が映る。
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みるくれーぷあいす(プロフ) - 鈴神さん» 嬉しすぎるコメントありがとうございます!これからも鈴神さんにそう思っていただけるよう頑張ります!よろしくお願いします。 (2019年8月24日 13時) (レス) id: 0de76de774 (このIDを非表示/違反報告)
鈴神(プロフ) - こんにちは!突然ごめんなさい(汗 作品読ませて頂いたんですが、一人一人の気持ちがとても丁寧に書かれていて一つ一つの話にすごく惹かれました!!ほんとに素敵なお話ばかりなのでこれからも応援してます!頑張ってください!! (2019年8月24日 1時) (レス) id: de3968cf62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作成日時:2019年8月13日 1時