オ ワ リ 3 ページ28
神威side
·
「俺だって、Aの考えてることはよくわかんないよ。わかんないから伝わってないんじゃないの？」
『…もういい』
Aは俺に背を向けた。
もうこちらを振り向くことが無いように思えて、呼び止めようとする。
『今までありがとう』
呼び止めは彼女の言葉によって呑み込まれる。
今、俺とAの関係は終わろうとしているのだ。なんて返せばいいんだろう。分からない。
「…うん」
素直に言えばよかったのに、俺は大人なふりをして彼女の申し出を受け入れた。
Aはそのままこっちを見ずに告げる。
『じゃあね』
後ろ髪を一本だってひかれることがない様子で、それに俺は苛立った。こっちは結構焦ってんのに。そのいらだちが自分勝手だと気がつく余裕はなかった。
そうして、俺と彼女は別れた。
それ以降話すことも会うこともないまま、高校を卒業し、俺は進学した。彼女も大学に進んだと、バカ妹から聞いた気がする。
彼女は俺のずっと前を歩いているような人物だ。だから、俺が少しだけ大人に近づいて、少しだけ彼女に追いついた今、Aのことを再び本気で好きになってしまうのも、当たり前のことなんじゃないか、と思っている。
***
「よおバカ兄貴」
「こんにちはアホ」
亜麻色のさらさらの髪にベビーフェイスという、王子様的な見た目をしたクソ野郎に笑顔を返してやる。
こいつは妹の元クラスメイトで、たまたま進んだ大学が一緒で、学部も学科も一緒だった。仲良く、と言うよりはつるむようになったのは大学に入ってすぐ。腹の立つクソ野郎だけどなんとなく波長が合うのだ。相変わらず俺の事を《バカ兄貴》としか呼ばないけれど。
「今日はアンタのおごりってことになってるけど文句ないよねィ？」
「むしろ文句しか浮かばないんだけど一発殴らせてよ」
誰が奢るか。
駅前の居酒屋はそれなりに混んでいて、俺と沖田は並んでカウンター席に座っている。早速俺がビールを注文すると、こいつはスクリュードライバーなんて気取ったもの(？)を注文した。何品かのおつまみも頼み、店員は去っていく。
「でも、あんたに彼女がいないなんて驚きでィ」
猛烈な勢いでおつまみを食べ、酒もそれなりに進んだところでいきなり沖田が呟いた。
「そう？興味無いだけだけど」
昔付き合ってた女に今更恋してますなんて口が裂けても言えない。
「あ、そーなんだ。俺はてっきり、高校時代の彼女に未練でもあんのかと」
さらりと正解を口にされた。やっぱ腹立つ。
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みるくれーぷあいす(プロフ) - 鈴神さん» 嬉しすぎるコメントありがとうございます！これからも鈴神さんにそう思っていただけるよう頑張ります！よろしくお願いします。 (2019年8月24日 13時) (
レス) id: 0de76de774 (このIDを非表示/違反報告)
鈴神(プロフ) - こんにちは！突然ごめんなさい(汗 作品読ませて頂いたんですが、一人一人の気持ちがとても丁寧に書かれていて一つ一つの話にすごく惹かれました！！ほんとに素敵なお話ばかりなのでこれからも応援してます！頑張ってください！！ (2019年8月24日 1時) (レス) id: de3968cf62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みるくれーぷあいす | 作成日時：2019年8月13日 1時
