オ ワ リ 2 ページ27
神威side
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知るのが楽しいだなんて、俺からは絶対に出てこないような発言だ。同じ人間なのか、と思うほど、自分とは違いすぎる。まるで毎日会う度に新しい世界を見ているようだった。
「俺には想像つかないや、ホントに楽しいの?」
『うん、本読んだりテレビ見たりさ、そんな簡単なことでも新しいことを知れるの。世界は狭いなんて言うけど、こんなに近くにいる神威の考えも私は完璧に理解できない。神威も、私のことを完全にわかったりしないでしょ?』
きらきらと語る彼女。
Aの目には、この世界はどう見えているんだろう。俺にはいつも同じように見えるここも、彼女には全く異なるように見えるのかもしれない。
「そうだね」
『だから、たくさん知る度に驚くし楽しい。自分と違うものの大きさが知りたいって、心から思うんだ』
「……どう、公道で熱弁してた感想は」
彼女はようやく周りの目がそれなりに向けられていたことに気づいたようで赤面し、早く言ってよ!と頭を抱えた。
面白い。彼女が世界を知るように、俺はAから世界を得ている。世界が上書きされてく。
意外と勉強って楽しいかもしれない、と今までならありえないことを思い始めたのもこの頃だった。彼女に感謝するべきだろう。
そして相変わらず、俺は伝えていなかった。
強いて言うならば、原因はそれだった。
***
『神威さ…私のこと好きじゃないでしょ』
目を赤くした彼女は俺を睨む。なんでこうなったんだっけ、とぼんやりと考える。
俺とAが喧嘩することは半年間に度々あって、その原因はだいたいくだらないことで、しばらくお互いに腹が立っていても気づけばまた一緒に帰っている、というのがお決まりのパターンだった。彼女もわかっているはずだ。俺よりずっと頭がいいから。
「なんでそう思うの?」
今回の喧嘩もそんな小さなことがきっかけで、こんな別れ話めいたものまでに発展するとは思ってなかった。
『神威、一回も私に好きって言ってない。それに、全然自分のこと教えてくれないじゃない』
何考えてるかも、嬉しいとか悲しいとか、神威の口から聞いたことないよ、とAは浮かべた涙をいっそう濃くした。
「なにそれ」
意味わかんない、と本気で思った。
そんなので簡単に判断するなよ、とまで思った。
今考えれば彼女の方が何歩も先を歩いてて、俺が子供だった。言葉にしなくちゃ伝わらないこともあると、知ることが出来ないと、彼女に教えてもらったのに。
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みるくれーぷあいす(プロフ) - 鈴神さん» 嬉しすぎるコメントありがとうございます!これからも鈴神さんにそう思っていただけるよう頑張ります!よろしくお願いします。 (2019年8月24日 13時) (レス) id: 0de76de774 (このIDを非表示/違反報告)
鈴神(プロフ) - こんにちは!突然ごめんなさい(汗 作品読ませて頂いたんですが、一人一人の気持ちがとても丁寧に書かれていて一つ一つの話にすごく惹かれました!!ほんとに素敵なお話ばかりなのでこれからも応援してます!頑張ってください!! (2019年8月24日 1時) (レス) id: de3968cf62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作成日時:2019年8月13日 1時