ア サ ヒ 2 ページ18
高杉side
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俺と水橋の間に沈黙が降りる。
でも考えてみれば屋上は俺のものとも水橋のものとも決まってないし、いまからまた一人になれる場所を探すのも面倒だ。そう判断して、彼女とは離れた場所に腰を下ろした。
『…高杉くん、日誌書いた?』
目をつぶろう、とした時に話しかけられた。今から寝ようとしてたのに、なんて苛つきを覚えながら水橋をみる。
日誌、確か机の中に突っ込んで、そのまま忘れていた。
「…書いてねェ」
『えー』
別にお前に関係ないだろ、と思いかけてそうだこいつも日直だと思い出す。そういえば他の物と一緒にカバンにしまったかもしれない。カバンを漁ってみると、【学級日誌】は見つかった。
『あ、あった。今書いてよ』
「…お前が書けばいいだろ」
俺が書く気ない事くらい分かっているだろうに、彼女は首を振った。
『これは高杉くんの仕事。はい書いて』
わざわざ俺の元までやってきて、見張りとでもいいたげに座る。チッ、と今度は本当に舌打ちがでた。
嫌々ながらペンケースを取り出して冊子を開く。風でページがめくれそうになるのをおさえた。
「…今日の時間割って何だ」
『ええとね、現国に数II、体育、日本史、あと化学と…』
時々彼女に質問をしながら、書き進めていく。次第にページは埋まったが、最後の欄でペンが止まった。【感想】欄だ。書くことが思いつかない。まともにやってないんだから当たり前だ。とりあえず「日直が面倒」とだけ書いておく。
『できた?じゃあ提出してね』
「めんどくせえ」
『そこまでが仕事です』
彼女は相変わらず笑っている。長い髪が風に煽られて揺れる。
さあ今度こそ用は無いはずだ、と思って水橋の顔を見る。
そこで、思わず息が止まりそうになった。
「…お前、どうした?」
こんなことを言うつもりはなかったのに、口が動く。
『…え?』
水橋の瞳から、水滴が零れていた。
本人は気づいてなかったのか、慌てて腕で拭っている。
『ごめん、なんでもない』
何でもなくはないだろう、泣いていたんだから。今思えばこの時に声をかけるべきだったのかもしれない。何かあったのか、と。
でも俺にはそれをしなかった。できなかった、という方が正しいかもしれない。
「…おい水橋」
俺が話したのは、全然違う言葉。
「ちょっと焼きそばパン買ってこい」
『…ええ、なんで?』
彼女は意味が理解できない、と言う表情をする。
『いや、やだよ』
ここから、彼女と俺の関係が始まった。
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みるくれーぷあいす(プロフ) - 鈴神さん» 嬉しすぎるコメントありがとうございます!これからも鈴神さんにそう思っていただけるよう頑張ります!よろしくお願いします。 (2019年8月24日 13時) (レス) id: 0de76de774 (このIDを非表示/違反報告)
鈴神(プロフ) - こんにちは!突然ごめんなさい(汗 作品読ませて頂いたんですが、一人一人の気持ちがとても丁寧に書かれていて一つ一つの話にすごく惹かれました!!ほんとに素敵なお話ばかりなのでこれからも応援してます!頑張ってください!! (2019年8月24日 1時) (レス) id: de3968cf62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作成日時:2019年8月13日 1時